こうん

シェイプ・オブ・ウォーターのこうんのレビュー・感想・評価

4.5
ぼくのギレルモがデル・トロしました!
(べニチオでも代替可)

いやぁ~。いやぁ~。
いいもの観させてもらいました…。ギレルモさん、ありがとう!
あなたの疎外者たちへの愛、尊厳への信頼、そして映画屋根性に打ち震えましたよ。
想い出すだに瞼の裏が湿ってきます…。

半魚人、流血、銃弾、スパイ、おっぱい。
…そんなジャンル映画的な要素をちりばめながら、“美女と野獣”にあっかんべーするようなグロテスクなファンタジーでありながら、現行米国社会へ異を唱える政治的な暗喩劇で、実際のところは胸を締め付けられるようなラブストーリーでした。
ラブストーリーっていうか、ロマンスです。
ダーク・ロマンス。

ぼくたちはギレルモ・デル・トロのルックスやその趣味趣向を知っているじゃないですか。
ザ・オタクですよ。こっち側の人です。映画秘宝年間購読者です。
(偏見ではないけど、「パシフィック・リム」の初日なんて黒T着たオジサンしかいませんでしたよ)

その彼の中にこんなにロマンチックで骨太なピュアネスがあるなんて。
それも甘々じゃない、現実のシビアさを知っている人間のピュアネスですよ。
反骨の気概を失わずに映画と悪戦苦闘してきた男の、渾身の(趣味全開の)ロマンス映画です。
幻想的なオープニングから涙腺決壊のラストまで、僕のハートは水浸しです。

バスの車窓をつたう水滴で愛の喜びや自由さを表現したり、不自由で孤独だったイライザの人生を肯定するかのような、あの“魔法”に…ちょっとね…思い出すと今YAVAYです。

至るところにギレルモさんのイマジネーションが横溢していて、とても豊かな映画でしたね。
ことによると字幕なしでもきっちり理解できるのではないかというくらいに、映画表現として多弁でありました。
2018年の美しい映画の発露を僕は見ました。

そしてなんといってもサリー・ホーキンスさんの千両役者っぷりですよね。
天涯孤独の身で唖で、それでも一日一日を楽しく夢見がちに生きていて、精神的肉体的な愛を求めてやまない女性。
そんなイライザを十全に表現しきったサリー・ホーキンスさんに快哉をあげたい。
イライザの感情劇場といっても過言ではないほど、イライザの一挙手一投足がこの映画の感情を支配してたのではないかと思います。
それに下衆な下心で書くのではないけど、彼女の身体も素晴らしかった。
たぶん誰にもささげたことのない清らかさと人間としての欲望をたたえた感じ、すげー説得力がありましたね。

お風呂場に水を溜めて魚人さんと睦み合うシーンは、ユーモラスでありながらすごく尊い、神聖な心持になりましたよ。
なんか童貞捨てた時を思い出しました。
今後サリー・ホーキンスの出演映画を追いかけたいっすね。

そしてマイケル・シャノン。
非の打ちどころのない悪役を人間味たっぷりに演じておりました。この悪役というのが、なんかのカリカチュア的な存在で、たぶん朝鮮戦争でタガが外れてしまっている感じもあって、すごく味わい深かった。
マイケル・シャノンはポスト・トミー・リー・ジョーンズ的な個性派役者としての存在感を高めてゆくのじゃないでしょうか。

リチャード・ジェンキンスさんもよかったね。彼の個性が明らかになった後の中盤のある語りではちょっと泣いちゃった。アウトサイダーの哀しみ、寂しさ。
それでもユーモラスなキャラクターで、このおとぎ話の語り部でもあって。フサフサですよ。

とにもかくにも、魂のこもった素敵な映画でした。
個人的には「パンズ・ラビリンス」のほうが傑作かなーという気はしますが、とにかく必見。
エンドロールのスペシャルサンクスにもグッとくるよ。


ネコちゃん好きな人は気を付けてほしい!
(犬派の僕ですが前夜に岩合さんのネコ歩きを観ていたので「ひえっ」となりました)

とりあえず家帰ってクナイプの青い入浴剤でお風呂入りました。
こうん

こうん