鋼鉄隊長

シェイプ・オブ・ウォーターの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

4.0
大阪ステーションシティシネマにて鑑賞。

【あらすじ】
1962年。アメリカ軍の研究施設で清掃員を勤める女性イライザは、ある日、研究対象として南米から運ばれた異形の生物に遭遇する…。

祝!アカデミー作品賞受賞!
これは大人のおとぎ話である。偏見の無い真実の愛を教えてくれ、なおかつ怪獣愛に溢れている。
時は欲望渦巻く東西冷戦時代。いつどこに敵が潜んでいるかわからないような世の中で、人々は偏見の眼差しで世間を見ていた。ある者は強い自分を演出して自尊心を高め、またある者は報道から目を背けて愉快なTVショーばかり観る。そんな時代だからこそ、ありのままを受け入れる存在は大切になる。この作品はパンフレットにもあるように、『美女と野獣』のアンチテーゼだ。あるがままを愛するなら、美女も野獣も関係無い。知らず知らずのうちに形成されていた「良い話とはこうあるべき」といった考えをぶっ壊して、真実の愛を教えてくれる。
そして、この物語の王子様である「半魚人」には、常に怪しげな魅力がつきまとう。この時代(50~60年代前半)の怪獣映画には「怪獣の権利」は無かった。つまり、人の行動が原因で怪獣が暴れ出したとしても、最後には問答無用で怪獣が排除される。今回の元ネタとなった『大アマゾンの半魚人』(1954)でも半魚人ギルマンは、人の手によって安住の地から追いやられて駆除された。この構図に監督は、「怪獣=弱者」を見出だしたのだろう。今回の映画での半魚人には、いつ消えても不思議では無い儚さが感じられた。
そうであるからこそ、怪獣好きとしては、彼の恋路には並みの恋愛映画以上に感動させられる。人を愛するとはどういうことなのかを、この映画で知ることが出来た。
鋼鉄隊長

鋼鉄隊長