T兵衞

シェイプ・オブ・ウォーターのT兵衞のレビュー・感想・評価

4.6
『美女と野獣』ならぬ『中年女性と半魚人』。

声を持たない主人公という設定はマイノリティの置かれている現状を端的に表している。究極的にマイノリティな存在の声は黙殺され、大衆の耳には決して届かない。しかし、その最中も声のデカいヤツらは笑っている。世間が二人の声を聴かないならば、二人は世間の声の届かない場所に行けばいい。

嗚呼、なんて美しいのだろう。本作はこの世の全ての恋愛映画の中で一番美しい(に決まっている)。こんなにも美しい映画他にあるわけない(に決まっている筈だ)。恋愛に於いて二人善がりになることは圧倒的に正しいと思うが、本作は向けられる差別の眼差しなんて微塵も太刀打ち出来ない絶対的な二人善がりな世界を描く。愛に他者の理解なんて要らない。ちょっと美し過ぎて号泣とか通り過ぎて陶然としてしまう。

美しい夢と無慈悲な現実の相克、ロマンチックなファンタジーを描けば描くほど、苦痛に満ちたダークな現実が猛威を振るう。ファンタジーに耽溺したところで現実は一向に良くはならない。しかし、理想主義と現実主義は両立出来る。本作の結末を夢で終わらせてはいけない。声を奪われた者に愛が声を与える。今もこの世界の何処かに生きているであろう、彼らの声を届けられる世界がKREVA。