ぴのした

シェイプ・オブ・ウォーターのぴのしたのレビュー・感想・評価

4.0
アカデミー四冠も頷ける、さすがのデルトロ監督!

デルトロ監督作品はパンズラビリンスしか見ていないけど、それに通ずるものを感じた。フランス映画のように可愛らしい色彩やユニークな脇役、そして空想の生き物といったおとぎ話のようなテイストの中に、冷戦が時代背景にあるリアリティとか、拷問シーンの多さといった残酷さが見え隠れする。

この絶妙なバランス感覚がすごい。パンズラビリンスでも同じことを感じたけど、童話やおとぎ話って結構残酷さや理不尽さを持っているものが多くて、そういう意味でこの映画もそういったおとぎ話の本質を備えているように思えた。

しかもただ単におとぎ話っぽい創作では終わらなくて、そこに時代的なリアリティを加えることで、現代でしか作れない作品として昇華させている。

全体的にフランス映画っぽかったな。水のシーンも綺麗で良かったし。画面の色彩の可愛らしさというか、寒色と暖色の色味が可愛らしいのもそうなんだけど、同僚の黒人女性とか、隣人の絵描きとか、いちいち良い人でなんだかんだ助けてくれるのが痛快で、見ていて気持ち良い。悪役も心地いいくらい資本主義の権化みたいな感じでとても良かった。

この映画は、隣人の絵描きが過去を振り返って語るという構造になっているんだけど、これによってあのラストシーンがほんとにハッピーエンドなのかわからなくて怖いんだよね。ほんとは死んでしまったけど、絵描きが想像でハッピーエンドにしたのでは…??っていう可能性が。。。パンズラビリンスを引きずりすぎなのかもしれないけど、これだけ残酷さを強調してきたデルトロ監督ならそういう意図があってもおかしくないと思った。

あと家の下が映画館だったり、家でテレビを見るシーンが多かったりと、劇中では執拗にスクリーンを意識させられる。声をなくした主人公が本当は舞台に立ってドラマのように歌を歌ったり人とコミュニケーションをとることに理想を抱いていることの表れなのかな。