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シェイプ・オブ・ウォーターのkrhのレビュー・感想・評価

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クラシカルな雰囲気で、過去のミュージカルや映画へのリスペクトが気持ちいい。
特にタップを踏むところや、イライザの愛情が溢れ出すミュージカルシーンは、(「黄金期を彷彿とさせたい描写」において)観たかったのはこういうのだと思った。これはララランドの悪口。

水イコール愛な今作、愛の舞台は全て水に浸されている。
卵を茹でる、浴槽、湿った研究室、モップの掃除、映画館、雨、海、「DONT WASTE WATER」のポスター、それが貼られているロッカーの裏で彼を失う予感に泣くイライザ。
異種生物間の愛だけでなく、理想的夫婦の性愛の部分、女性同士の友愛、男女の純粋な友愛、同性愛、自愛、色々な関係の愛について語っていて、しかも当然それは関係を紡ぐ本人たちによってひとつひとつ様相は異なるわけで、それが自然にわかるようになっていること、そして水の形に正解がないように愛の形に正解はないというタイトルの妙に感心しきり。

彼はすくっと二本足で歩くし、仕草が思いっきり人間的なのは、彼が着ぐるみの怪獣として登場しているからなのかな、と思った。ギレルモ監督じゃなければ、もう少しモンスターっぽいクリーチャーになっていたんだろうなと。あるいはもっと人間ライクでまぶたが半透明でない生き物に。

クレジットの背景が、海を表す日本の伝統文様である「青海波文」になっていてひどく感激したし、「ふたりは海で幸せに暮らしました」の一文が浮かんで涙が出た。
青海波と知らない人も、あの文様はうろこを連想するだろうと思うし(彼もそうだけど、彼女に関して「人魚になった瞬間を初めて観た」と思った)、さりげなく言外に語るめちゃくちゃ良い終幕だなあと思う。
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