カラン

シェイプ・オブ・ウォーターのカランのレビュー・感想・評価

4.0
ギレルモ・デル・トロの『シェイプオブウォーター』は今回のアカデミー賞で作品賞、監督賞、他2つを受賞した。この賞は発表のタイミングや作品外の条件が大きく関与してそうだが、ギレルモ・デル・トロのような「変わった人」の作品がメジャーな賞に輝くのは、めでたいことである。

作品そのものにもLGBTのような性的趣向や、人種、性差、国籍などのマイノリティーに対する強い声援と、差別的な態度への強いアンチが溢れていた。「欠けているもの」は誰にだってある。声が出ない、髪がない、若くない、肌が黒い、そういうものは、声が出て、髪がはえてて、若くて、肌が白い、ということが唯一絶対の条件であるかのように考えているから、「欠けている」と思えるだけ。声が出ない、髪がはえていない、肌が黒い、そして人間でない、そういうことを「愛おしい」と感じる者もいるのだ。捨てる神あれば、拾う神あり。この「拾う神」はイライザであろうし、半魚人でもあろう。お隣のギレルスでも、友達のゼルダでも、ドクター・ディミトリでもあろう。誰でも他人に捨てられるリスクはあるが、拾う神に出会うチャンスだってあるし、誰でも誰かの拾う神になるチャンスがある。チャンスの時に勇気をもつこと。この映画はそう言っているようだ。英語のstrangeという言葉は語源的に「見知らぬ、異国の」を意味するが、人は「知らない」というだけの状態に留まれず、「変な、おかしな、奇妙な」という否定のほうにすぐに走ってしまう。そうじゃない。この映画は「知らない」ものでも、愛せるなら愛してみよう、そう誘っているのだと思う。

英語版のwikiのpersonal lifeの項に次のように書かれている。

He also owns two separate houses exclusively to house his books, poster artwork and other belongings pertaining to his work, explaining, "As a kid, I dreamed of having a house with secret passages and a room where it rained 24 hours a day. The point of being over 40 is to fulfill the desires you've been harboring since you were 7."
「彼はまた二つ別邸を所有しており、もっぱら本を置いたり、美術品や彼の作品につきものその他の物品を飾ったりするために使われている。「子供の頃、秘密の通路や1日に24時間雨が降る部屋があるような家が欲しいと夢に見ていた。40を過ぎて大事なのは、7歳の頃から抱き続けてきた欲求を叶えることだ。」と彼は説明している。」

映画を観ると、なるほどと思う。これは2011年のインタビューのようだが、どうやら本作『シェイプオブウォーター』は監督の幼年期からの夢の実現でもあるようだ。
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