Inagaquilala

シェイプ・オブ・ウォーターのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.7
自分的には作品賞は「スリー・ビルボード」だったのだが、この作品がアカデミー賞の栄誉に輝くのはわからないでもない。声を失った女性とアマゾンで捕獲されてきた水棲の生物とのラブロマンス。「怪物」といってもいいくらいの外見を持った水のなかでしか生きられない「彼」に恋する物語は、「オペラ座の怪人」や「美女と野獣」の物語も彷彿とさせる。

このところアメリカではマイノリティーが物語の中心にすわる作品が多いような気がする。「グレイテスト・ショーマン」しかり、この作品しかり、どこかに現在のアメリカを象徴するような隠し味が存在する。たぶん障壁が多いほどドラマを組み立てやすいという事情もあるかもしれないが、それだけではない、人々のなかにある潜在的な感情をすくい取るような作品がヒットにつながっているようにも感じる。

監督のギレルモ・デル・トロは、これまで「怪獣映画」や「ファンタジー」のイメージがついてまわっていたが、この作品も確かにそのような一面はあるのだが、懸命に現実にも寄り添おうという姿勢も見られる。主人公の女性の隣に住む老人や、東西冷戦のなかでジレンマに悩む科学者など、社会的な葛藤を織り込まれた人物も登場している。このある意味での成熟が、アカデミー賞に輝いた理由かもしれない。とはいえ、イギリスとアイルランドの国籍を持つ劇作家でもある監督が描いたアメリカ中西部の田舎町の物語が、自分的には、やはり作品賞だ。
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