YukiSano

シェイプ・オブ・ウォーターのYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.1
怪獣や怪人とは社会の闇の象徴である。
また虐げられた人々の象徴として描かれる。しかし怪獣怪人ものはジャンル映画として虐げれてきた。そして、これはそんな怪人が出てくるZ級映画をアートにまで昇華したアカデミー作品賞映画。

最も虐げられたジャンル映画とも言える怪人ものにエログロエッセンスまでブチ込んでくる怪作。アカデミー賞撮る前に観たかったが、撮ってから観ても衝撃を受けるレベルの赤裸々さ。オープニングのヌードにド肝抜かれてから、甘いストーリーに攻めの演出が絡んでくることにワクワクできる。

半魚人と障害を持つヒロイン以外にも、黒人女性、ゲイの老人、ロシアのスパイ、など社会や組織から「声」を封殺された人々が目白押し。ただし本当に声を失っていくのは悪役だったと分かってくる所がミソ。

出来そのもより、あらゆるマイノリティをメタファーにして差別されたジャンルに対して愛をとことん表現していることにメロメロになった。ウルトラマンやゴジラ、仮面ライダーから映画などにハマったものとしては愛さずにはいられない。

この作品がアカデミー賞を撮ったことは快挙どころか、歴史的な偉業だと確信。円谷大先生も中島春雄さんも成仏しただろう。シンゴジラと共に、ついに時代が彼らを認めたのだと感慨無量である。ハリーハウゼンやティム・バートン達がバトンを繋いだ結果だと思う。

去年のムーンライトからアカデミー賞は変わってきた。というよりも社会全体が激烈に変化してきていることを映画を通じて感じる。

この現象は、かつて1968年に「2001年宇宙の旅」や「イージーライダー」が登場してアメリカンニューシネマの潮流が生まれた時と似ているのではないかと思う。1999年の「マトリックス」や「ファイトクラブ」の時も68年と比較されるくらい革命的だったが今回の方が凄まじい変化の予感がする。

映画は時代の鏡だ。
虐げれてきた者達が立ち上がり、栄冠を勝ち取ったことが、どれ程のことになるのか見届けたいと思う。そんな歴史の転換点となる極めて重要な作品である。

たくさんの人に時代を肌で感じて欲しい。
YukiSano

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