このレビューはネタバレを含みます
もしもこの映画が、綺麗なシーンや詩的なシーンしか映さず、暴力シーンもセックスシーンもなかったら、きっと嘘っぽくなってたと思う。
ファンタジーに一番必要なものはリアリティだと思ってる。リアリティがなければファンタジーはただのウソになってしまう。
世の中は綺麗なものだけで出来てない。綺麗なものしか写さなかったらそれはウソだ。
指がぶち切られて、血が出て、猫が喰われて、セックスにモザイクが掛かって、指が壊死して、銃で顔撃たれて、顔に空いた穴に指引っ掛けられて引きずり回されてこそ、二人が水中で抱き合うシーンの美しさに説得力が出るってもんだ。
言葉を発せない分、表情とボディランゲージが豊かなイライザ。声帯が使えないだけで決して無口な人じゃないんだな。
解剖されてしまう魚人を助けなきゃと手話で隣人のゲイのジイさんを説得する時の必死の顔とか、まともに取り合ってくれなくてジイさんの胸ぐらを掴むアクションとか、魚人とバスルームで抱き合った時の幸福絶頂の表情とか、あと一歩でクサイ演技になるところのギリギリだったけど、口が利けないイライザだからこそ成立する。
乗せられる分だけの全部の感情が乗っかってる、そんな演技で、俺はなんかウルっときた。
警備主任に、手話で「ファックユー」する時の表情も絶妙。
ドラクエの海底ステージみたいなメインテーマがやたら耳に残る。