誰かに特別感情移入は出来なかった。
それが故にずっと遠くの国の美しい童話を読んでいた感覚になる。
ストーリーは一見普遍的ではあるが個性豊かな名優達によるコクのある演技、画面全体の細かに計算された色味、丁寧で味のある美術、耳と記憶へしっかりと残るメロディによって唯一無為の傑作へと昇華された。
ともすれば甘くなりすぎるところを、所々にエロチック&グロテスクな描写を挟むことで締まりをもたせたのも巧い。
そう、デルトロはいつだって教えてくれる。
どんなに異形や孤独な者にも、誰かを愛し愛される権利があるという事を。