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シェイプ・オブ・ウォーターのswaptvのレビュー・感想・評価

5.0
まずデル・トロ監督オスカー受賞おめでとうございます!多くの方が言われてる通り、モンスター映画が作品賞を受賞するという歴史的な快挙。実はファンでありながらもデル・トロ監督はもはやオスカーとは無縁の所にいると思ってしまっていた。過去に『パンズ・ラビリンス』のような作品があったとは言え。そして今作はそれのセルフ・リメイクのように感じた。

正直な所、鑑賞直後の印象で言うと前日に見た『スリー・ビルボード』の方が面白いと思った。でも鑑賞から半月くらい経った今となっては今作の方が心に強く残っている。私の基本的嗜好として言い方は良くないが、奇をてらっている作品が好き、というのがある。いわゆるヘンテコな映画の方が見てて楽しい。その観点でいうと『シェイプ・オブ・ウォーター』は設定の奇抜さはあれど、脚本は至極真っ当な王道ラブストーリーと言える。展開もベタベタで予定調和と言ってもおかしくない。なのにじわじわと心を侵食されている。それはきっと登場人物みんながothersであったからだと思う。声の出ないイライザや異形の不思議な生物、黒人のゼルダ、ゲイのジャイルズ、良心の呵責に苛まれるホフストラー博士。みな社会的に抑圧されて生きている。これは分かりやすいように属性をつけられているだけで、現実の私たちだって社会に簡単に溶け込んでいる訳ではない。誰しもがothersだとも言える。そして一見すると成功しているように見えるストリックランドが実は一番孤独で窮屈そうで、反面今作に登場するothers達は生き生きとしている。この対比が非常にうまい。

何よりヤラれてしまったのが、ストリックランドのキャラクター。『パンズ・ラビリンス』のファシズム全開の大尉は同情する余地は少なかったように思えるが、ストリックランドに関して言えば行った所業の数々は許されるべきではないけれど、彼は彼で時代や環境により守るべきもの目指すべきものを無意識化で強制させられ不自由な生活を送っていたように思える。何が正しいかを自分で考える事が出来ず、全て社会で作られた虚像を信じて生きている。薬に依存し、自己啓発本を読み、自己暗示をかけて、子供の頃好きだった安い飴で心を落ち着かせる。"まとも"でいようとし続けるあまり精神のバランスがガタガタで、一度の失敗で捨てられてしまう。最も哀れな人物ではないだろうか。

いくらでも語れてしまう気がするのでこんな所で。。。イライザが最後人魚に戻ったというのは、あくまでジャイルズの語りであって彼の想像の世界ではないかなと思った。あとそうだ、好きなシーンは沢山あるんだけど、ジャイルズと半魚人が少しずつ気持ちを近づけるシーンが特に好きで、ジャイルズが「俺らは時代の遺物だな」みたいなセリフを言う所にグッと来てしまった。モンスター映画を撮り続けるデル・トロ監督の本音に感じてしまって、でもそんな作品が賞レースでしっかり認められて(泣)。『大アマゾンの半魚人』見なきゃな…。
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