なみつ

シェイプ・オブ・ウォーターのなみつのレビュー・感想・評価

5.0
ああーシンプルにきた。
なぜだろう、なんでこんなに。

初めてポスターの絵を見たときの心がぎゅっと締めつけられるような感覚が、そのまま映画になっていた。

ストーリーはすごく王道だと思う。ヒロインが話せなかったり相手が人間ぽくなかったりはするけど、それはラブストーリーにおける障害という意味での設定のひとつなわけでまあわりと見るし、登場人物も多くないのであらすじだけ書いたら10行以下で済みそうなくらいすっきり。
デルトロ監督の他の作品のレビューで、内容の薄さを圧倒的画力だけでねじ伏せて2時間魅せきってしまう、というようなコメントを見てファンながら納得してしまったことがありますが、今回も薄いとは言わないまでもほんとにシンプルだと思いました。

なぜこんなにも心打たれたのか分析してみた結果、最終的に半魚人に感情移入していたからだと考えます。ヒロインには実はあまり、共感できなかったのですが(好きだけど、度胸ありすぎた)、半魚人は話さないし、終始痛めつけられてるのでただただ、かわいそうな存在にしかならない。人間社会で絶望している中、自分を見つけてくれて。連れ出してくれて、愛してくれて。自分にとってもそういう相手が見つかって。途中イライザが、彼は声の出ない私のありのままを受け止めてくれて…というニュアンスで熱弁(熱手話)するシーンがありますが、それは彼にとってはそのまま、貴女のことなんだよーーーーと言いたくなった。アマゾン時代も恐らく本質的には孤独だったのだろうなと思うとね、よかったーほんとよかったね…受け入れられないもどかしさは誰しも少なからず抱えていると思うので、彼らにはお互いがいて、結末が悲しいものでなくてほんとうによかった。この作品には「成就」という言葉がしっくりくる。キングコングの思いも叶ったらこうなるのかな。でもやっぱりサイズ感は大切だよね、、
半魚人が女性だったら博士との物語だったのだろうか…

登場人物たちがほんと皆愛しいキャラしとる。
イライザみたいな一見おどおどした感じの女性キャラクターは日本人は慣れてるけど、海外ではどういうポジションなんだろ。といっても実際はめっちゃ怖いもの知らずだし肉食系だし、ほんとこの人、好きだなー、生活が好き。半魚人を連れ出すところのくだりは、もういっしょにいたいからでいいじゃん、と思ったけれども。
パワフル上司もわたしはどうしても嫌いになれなかった。哀れすぎる。妙に彼のプライベートも描かれていたから意図的なのかもしれないけど、完全悪には思えない。偉そうにしてても奥さんの意見に流されているところとか、見栄と承認欲の固まりなところとか。ただ暴力はよくない。トイレで手を洗うのくだりは笑うとこだったのか?男性にしかわからない話なのでしょうか…
絵描きおじいちゃんもほんとうにかわいすぎました。「自分は時代に合わなかった」と寂しげに話していたセリフ、直訳すると、生まれるのが遅すぎたかまたは早すぎた、という感じだったと思うのですが、それがすごく切なくてな…遅すぎたのかもっていう発想はなかったです。慣用句かな。彼も報われてほしい。猫に案外執着がない。髪にはある。そう考えると、猫と魚の下剋上。

インタビューで監督は「美女と野獣」のけっきょく見た目かーい感が嫌でおばちゃんと怪物の話にしたとあったんですけど、イライザめちゃくちゃ綺麗だし半魚人もがっつりイケメンやんけと思ってしまいましたそこが本質じゃないのはわかってるんですけどもはい。

パンズ・ラビリンスでデルトロ監督を好きになりましたが、それ以降の作品は少し、なんというか独特すぎて正直ついていく自信をなくしていました(パシフィック・リムはちょっと別枠)。ダークフェアリーでは騙され(こんな怖い話とか聞いてませんけど?!)、クリムゾンピークでは謎のキャットファイトを見せられ、好きなんです、好きなんだけど「どうした?!」ってなる作品たちだったので、今回、求めていたものを観せてもらったなあ、、、と、感慨深かったです。ディズニーやマーベルみたいに、全力で私達を楽しませようとがんばってくれてる映画もすごく好きなのですが、こういう、作りたいものを作るぜーーが溢れてる作品からは、また別の何かを得られたような気持ちになります。

クリーチャーボイスが監督になってたように見えたのですが、作成したってことかな。

今日はひさしぶりに雨が降った。
なみつ

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