七沖

シェイプ・オブ・ウォーターの七沖のレビュー・感想・評価

3.7
〝切なくも愛おしい愛の物語。〟
まさに大人の童話、といった感じの作品だった。

声が出せないイライザは、清掃員として働いている研究所に人間ではない何かが搬入されてくるのを見てしまう。施設の人間から拷問のような調教を受けるその生物に対し、イライザは密やかな交流を持つようになる。だが、その生物が解剖されてしまうことを知ったイライザはなんとか助け出そうと試みるが…というストーリー。

イライザを演じたサリー・ホーキンスの、言葉に頼らない表情と仕草による感情表現が圧巻。感情が昂ぶった時の手話は迫力があり、胸が締め付けられた。

たが…この作品、自分はあまりハマれなかった。
これを言うと元も子もないのだが、半魚人を隔離している部屋のセキュリティがザルすぎる。童話なんだからと言われたらそれまでなのだが、そうしたところに冷めてしまった。
あと、モザイク表現で一気に現実に引き戻された。どうせならレーティングを上げてモザイク無しにして欲しかったが、興行収入にも影響するから難しいのだろうか…。

もちろん良かった点も多く、緑を基調とした色彩表現は記憶に残るし、バスルームを水に満たしての抱擁は幻想的だ。恋するイライザがどんどん少女のように活き活きとしてくるのが微笑ましかった。
結末も非常に印象深く、「ああ、なるほど!」と思える幕引きだ。

個人的に気になる部分がノイズになってしまったが、童話としての完成度はとても高い。何より、半魚人という万人受けしないグロテスクなモチーフで、こんなにも素敵な異種族間の交流を描いた本作は間違いなく観る価値があると思った。
七沖

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