あたもす

シェイプ・オブ・ウォーターのあたもすのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ギレルモ・デルトロ監督

発話障害の女性イライザと半人半魚の異形のラブストーリー。

大好きギレルモ監督。パンズ・ラビリンスやパシフィック・リムなど前作から好きな監督であること、アカデミー賞受賞作品ということでとても期待して見に行きました。
オープニングの世界観や、異形のデザインはやはりさすが。前作のペイルマンもなんですが、今回の異形の彼もCGではなくメイクやスーツで実際に人が演技しているせいか、とてもリアルを感じます。
正直ギレルモ監督はパシフィック・リムで衝撃を受けたからか、男の子のロマン!カッコイイ!!ってのをすごい求めて見てしまったので、見た後はちょっと期待外れな感じがしてしまった。ストーリー自体はテンプレという感じで悪くもなく良くもない感じ。
でもこの映画はその辺が主軸ではなく、マイノリティとマジョリティや社会的強者と弱者に焦点をおいた社会派(?)というか疑問を投げかける映画でしたね。現代の流れをしっかり捉えているというか。
主人公サイドは障害者、異性愛者、異形、異種族間での恋愛というマイノリティな弱者組で、悪役は社会的強者というわかりやすい構図。最初は悪役ストリックランドが嫌な奴すぎて、なんだこいつって気持ちだったんですが、彼自身もその社会の位置付けにしばられていて、金髪美人の妻、子供は二人、明るい一戸建て、流行の車、そして仕事では絶対の成果を求められ、「成功者」というテンプレートに縛られている。「私はこれまで完璧にやってきたはずだ。いつまで続ければいいのですか」と彼の上司に訴えている姿には悲壮が感じられました。ポジティブになるための啓発本をさりげなく読んでいたり、小道具に度々彼の辛さを仕込んでくるのが憎い。
わざわざストリックランドの妻とのセックスシーンが入ってたりして、これ必要か?と思って見てたんですが、これは主人公サイドの主人公と異形のセックスとの対比なのかなぁと思ったり。幸せそうな主人公サイドと比べ、ストリックランドは少し目が死んでたような気がしなくもない。義務感があった感じの。でもなかなかその辺の構図に気づけませんでした。

表のラブストーリーが進んでいく中で、いかにこの構図に気付けるかでこの映画の印象がすごく変わる気がします。物質的、社会的な幸福があっても、それだけでは真の幸福は得られない。主人公サイドは度々苦難に立たされますが、それでも互いの関係や支え合うことで幸せそうに見えます。
ここまで悪役を色々言いましたが、やっぱり悪役だけあって、嫌なやつなんですけどね
あたもす

あたもす