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シェイプ・オブ・ウォーターのslowのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

これは純愛物語なのだろうか。だとしたら、この上なく美しいラストシーンだったなと思う。しかし、あくまで人と半魚人の物語だとすると、少し闇を感じずにはいられなかった。
恋愛観は人と半魚人では同じではないはず。そもそも半魚人に恋という表現に当てはまるものがあるのかどうか。イライザは恋をし、半魚人は本能のまま生きた。2人の引かれ合う力は微妙な擦れの上に働いていたのではないか。
本作は本来クライマックスで起こるだろう対象を敵から逃がすという従来の異種間交流物語の定番を中盤で迎える。そこから悠長に自宅でイチャイチャ(ここもとてもファンタジー)。人間視点の恋の甘さも引き立たせつつ、あのラストシーンはやって来た。
果たして人間ではなくなってしまう結末はイライザにとって幸せな結末だったのだろうか。愛が成就したとも受け取れるけれど、あのジャケットのシーンからはディープなダークファンタジーのにおいを感じ取ってしまった。本当は怖い〜童話的なやつ。そこを観た後に冒頭のシーンを思い返すと、印象もかなり違ってくる。
イライザ含め周囲に社会的弱者が多いことから、自由への戦いや反骨精神を描く物語なのかとも思ったけれど(実際そういう解釈もできるし、アカデミー賞を獲ったのもそれが大きな理由かもしれない)、デル・トロにはもっと巧みでモヤモヤする物語を期待してしまう。だからこそ無駄に妄想もしてしまうよ。正直彼の作品でなければ手放しで褒めたと思う。

思い出すのはナタリ監督の『スプライス』。私的にはそちらの方が楽しめたかもしれない。と言うと自分の変態ぷりがバレてしまうか。しかも調べてみるとそちらの製作総指揮にデル・トロの名が。この人ことごとくこういう作品に絡んでくる。
ストレートに純愛映画として観ればいいものを、相変わらずの捻じ曲がった見方をしてしまった結果、好みの解釈に辿り着くことができた気がする。きっと監督の意図とも違うだろうけれど、額面通りなら自分の中ではそれ程印象に残らない平凡なファンタジーで終わっていたと思う。
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