木葉

シェイプ・オブ・ウォーターの木葉のレビュー・感想・評価

3.0
しっくりこない作品であった。
ギレルモデルトロのパンズラビリンスを当時劇場で観た時から、デルトロにしか作れない世界観でこの人はもっと凄い作品を作るのだろうと思い、それにシェイプオブウォーターは該当するのだろうが、アカデミー賞受賞や、評価が高い理由が納得いかなかった。なぜなら、パンズラビリンス同様、ヒロインにデルトロ本人を投影しているように感じるからである。
原題の意味が、デルトロが現代に投げかけたメッセージである。
水の形、水の形なんて存在しない、形や見た目なんて重要なことではないと。
冷戦時代のアメリカ、夜の世界に生きる非リア充の主人公が半魚人の彼と恋に落ちる。観客は、弱いけど信念を持つ主人公に感情移入し一気に物語にのめり込む。
暗い時代、鬱憤がたまり、未来がどうなるかわからない中で、ヒロインと半魚人との恋、そして半魚人を救おうとする姿に観客は、夢や希望を見出す。
デルトロが描きたい世界観は美しく、奏でる音楽も儚げで幻のようだ。
冷戦時代にも通じる、暗く、人種差別が甚だしく、世界情勢が混沌する現代へのアンチテーゼが込められ、理想形の美しい映画だ。
傲慢で強い人たちに対して弱者が正義を翳し立ち向かう映画は、ロマンチスト、日頃ない何かを求め、マイノリティだけでなく、マジョリティーに受ける映画である。
映画に夢や希望を見出す、もしくは空想の世界を作ることで自分を保つことは必要なことなのかもしれない。
木葉

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