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シェイプ・オブ・ウォーターのellieのレビュー・感想・評価

4.0
1962という不穏の時代と、サリー・ホーキンス演じる主人公イライザの設定を決めたとき、この作品は七割成功したといってよいと個人的には思う。

異形のものとの恋愛という構造を持った作品は数多あるが、これは出会いの時点で既にイライザの心はほぼ決まっている。その辺りがギレルモ監督の愛に対する挑戦とも取れる。

そもそも、タイトルは「水のかたち」だ。水は器でいかようにでも形を変える。更には川や海に流れ込み、蒸発し雨や雪となり大地へと染み込む。生命に不可欠でありながら、人はそれを意識しないまま享受し続ける。

文明の驕りの象徴であるようなホフステトラー博士等を暗とすれば、声を持たないイライザのまわりは常に奇妙な明るさとおかしみに満ちている。更には緑と青の中間のような水の色が、海へと通じる強い生命を思い起こさせる。

「パンズ・ラビリンス」で主人公を迷宮に引き込み、いわゆるドラマツルギーを無視したギレルモ監督が、時代を経て今作品ではシンプルなほどのストレートな愛を提示した、そのことの意味の大きさを考えずにいられない。
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