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オー・ルーシー!のRのレビュー・感想・評価

オー・ルーシー!(2017年製作の映画)
4.5
毎日が同じことの繰り返し、ゴミ屋敷のような部屋の中で、溢れるほどの物に囲まれながらも、心の中は空っぽで常に孤独だった節子は、たった一回のハグで救われてしまう。滑稽にも見えるカツラを被るという行為も引き金となって、それまで留めていたのであろう誰かを愛したいという願望が呼び起こされ、別人格が生まれたように、一心不乱な愛をどんどん加速させてしまう。最後にはほとんど狂気的なほどに。


姉に恋人を取られ、そのまま結婚されてしまう人生ってどんなだろう。そのあたりの事情やそれぞれの心情はほとんど明かされず、どちらかと言うとそんな過去からすれば被害者とも思える節子の方が歩み寄ろうとしてるのに対し、ひたすら冷淡な姉。
娘のことをもう死んだものと思うことにする、と言い捨てることのできる姉と姪の親子関係。実は離婚暦のあったジョンは離婚してて家族には完全に拒絶された孤独な存在。この映画には崩壊した家族像しか描かれていない。無条件の愛など存在しないかのように思える世界で、節子は愛を渇望し、自らの愛を暴力的なほどにジョンに投げ打つ。

キャットファイトが多く、全員が体当たり演技。女はマウンティングし合って牽制しあうことでしか生きられないのかもしれない。この世で女たちは常に戦っているのだという事実を突きつけられたような気持ちになった。

すべての演者の本当に素晴らしい演技によって映画内の世界観がしっかり構成されていて、非常に味わい深い作品だった。

カンヌの批評家週間にて、舞台挨拶と共に鑑賞したが、拍手喝采のスタンディングオベーションで終わっていて本当に感動した。
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