MasaichiYaguchi

オー・ルーシー!のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

オー・ルーシー!(2017年製作の映画)
3.5
孔子は「四十にして惑わず」と言ったが、長寿化によって人生80年時代と言われる現代において40代は「人生の折り返し」であり、「人生考え直し」の時期だと思う。
本作のヒロインの節子は会社では存在感の薄い43歳の独身OL、ヘビースモーカーで雑然とした部屋に住む彼女は、華やかさや浮いた噂とは無縁の日々を送っている。
そんな彼女の日々が、メイド喫茶で働く姪の美花によって通うようになった英会話教室で変わっていく。
学生時代に長く英語を学んだ者の一人として、彼女の英会話教室の担当講師ジョンによる授業はかなりユニークだが、受講したら楽しいかもしれない。
この英会話教室の授業では彼女は節子ではなく、「ルーシー」というキャラクターになって授業を受ける。
この「ルーシー」というキャラクターが彼女の内なるスイッチを入れ、抑えていた感情や欲望を解き放っていく。
小悪魔のような姪っ子を契機に始まったヒロインの転機、精神的な揺らぎは彼女を暴走させ始め、やがて「ミドルエイジ・クライシス」という事態にまで発展していく。
性別は違うが、ヒロインが経験した中年期の惑いや心の揺れは私にもあったし、多かれ少なかれ誰でもがそれを乗り越えて「天命を知る」50代を迎えるのではないかと思う。
人生のパンドラの箱を開けて紆余曲折、悪戦苦闘の末の彼女に、本作は最後に温もりと優しさを残します。