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オー・ルーシー!のレクのレビュー・感想・評価

オー・ルーシー!(2017年製作の映画)
4.0
退屈で憂鬱な日常。アメリカ人講師との出会いをきっかけに彼女の日常が一変する。
何かに囚われていたり、ストレスを感じる環境で暮らしていると、羽を伸ばしたいだとか、新しいことに挑みたくなる。
この作品はそんな誰もが抱える願望に訴えかけ、人生が持つ潜在的な可能性に気付かされ、その一歩を踏み出すきっかけになるのではないだろうか。

社会の中に埋もれてしまいそうになる。
そんな先の見えない状況でも、心に温もりを与えてくれる存在があるだけで人は生きていけるのだろう。
日本人にはあまり馴染みのない挨拶"ハグ"という行為が表すのは誰かの温もりを感じていたいという心の投影。
その誰かが、たとえ思い描く理想の人でなくとも、思いもよらない相手だったとしても。

節子とルーシーという一人の女性が持つ二面性の描き方、窒息してしまいそうな閉塞的な人生と勢いのまま行動する開放的な心情の対比、それに伴う寺島しのぶの細かな所作や演技が素晴らしい。
新たな名前を手に入れ、新たな人生を歩もうとする女性の新たな心情の変化。
嫉妬や欲求、深すぎる一途さ。
節子(ルーシー)の姿を通じて、観客である我々が人の胸に秘める欲望に気付かされ、心を揺さぶられ、共感させられるのだ。
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