emily

彼女の人生は間違いじゃないのemilyのレビュー・感想・評価

4.0
福島に暮らす人々。仮設住宅に暮らすみゆきは市役所で働きながら、週末は東京で週末デリヘルのバイトをしている。父は汚染により農業ができなくなり、保証金でパチンコ暮らし。市役所の同僚もまた現状でもがいている。家族はばらばらになり弟と暮らしているが、女子大生から被災地の未来について問われ、答えることができない。ある日いつもようにみゆきがデリヘルの店に行くと、店員だった三浦が辞めており、俳優業をやってる事を聞き、舞台をみにいき・・

 福島を舞台にし、退廃的な町をしっかり映す。仮設住宅暮らしでそれぞれの苦悩があり、5年経っても現状はあまり動いていない。週末東京でデリヘルのバイトをしているみゆき。作り笑顔で男に奉仕し、そうして平日は仮設住宅に帰っていく。東京と福島を交互に映し、その街の風景を、そして東京の顔になっていくミユキを映す。あまり感情が表にでない、しかしふとした横顔や肩の動きなど、繊細な動きの変化に彼女の心の変化を覗かせる。朝ご飯を炊いて、母のお仏壇にお供えする。この瞬間、この時間に見せるミユキが本当の姿のような気がする。ほんの少し笑顔を見せ、ほんの少し優しい表情を見せるのだ。

 福島と東京・・人の数、雑踏、街はもちろん全く違う。しかしもがき苦しみ、現状を打破したいと思いながら何もできないでいる、居場所がなく同じ場所で地団駄踏んでいるのは、東京だろうが福島だろうが、どこにいても同じなのだ。。5年後の福島いわきをしっかり描写することで、見えてくるのはそれがそのまま日本の象徴だということ。

 だれだってもがいてる。誰だって苦しみ悩みを抱えてる。現状は街は変わらない。変わるのは自分自身しかない。誰もが孤独の中で未来の見えない今の中で、それでも少し前に進んでいく瞬間。。誰かの言葉が、何気ない仕草が、結局人は人に動かされ、繋がってないようでも人と繋がりながら生きている。
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