子持ちのカイロレン

日本侠客伝 雷門の決斗の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 雷門の決斗(1966年製作の映画)
5.0
 健さんが一枚看板になったシリーズ第五作。浅草の芝居小屋を舞台に、興行魂、芸人魂がスパークするシリーズ屈指の名篇。芝居小屋もプログラムピクチャーの作り手も同じ役者で違う話を演じ続ける擬似家族みたいなもので、きっと重ねる部分も多かったんだろう。健さんに芸人道を説く村田英雄が印象深い。
「興行師に呼ばれたり、お客さんに騒がれたりする間は、親の死に目には、会えねぇってもんだ…」
忙しすぎてなかなか家にも帰れず、親の死に目にも会えない。そんな東映プログラムピクチャーの作り手の想いが作品全体に詰まっている。
 今作の大きな名場面二つ。一つ目は村田英雄の浪曲。敵の襲撃を、俺が浪曲で引きつける!とばかりに披露する名人芸。正面からしっかり尺をとって二回も聞かせてくれるのはマキノ雅弘監督の浪曲への愛情だろう。時代劇、任侠映画のルーツに浪曲あり。もう一つは島田正吾のやり過ぎ任侠ジジイ芝居。元ヤクザの侠客で芝居小屋を助けている店番。敵の脅しに「へっへっへ」とか言いながら懐のドスをチラッと見せる。演じててさぞ気持ち良かっただろう、こんなに嬉しそうな殴り込みもない。あと今作の藤純子が今まで以上に最高の藤純子で堪らないです。