みんたろう

シャンハイのみんたろうのレビュー・感想・評価

シャンハイ(2010年製作の映画)
3.0
2020年145本目

魔都上海でのスパイ活動。
ワクワクする要素は満載で、傑作になる可能性はあるのに普通に落ち着いてしまった感じの作品。
史実性はともかく、もう少し良い料理の仕方がありそうな残念な印象。

上海は今も東洋のトップをいく街だが、20世紀前半の国際都市としての魅力は今以上。
谷崎、芥川、横光ら文豪達を惹きつけ、様々なメディアの題材となる魔都は、東西文化が衝突するイデオロギー・政治・軍事闘争の最前線。
本作の街の造形は、綺麗なところも汚いところもリアルで、当時の空気感を感じられる素晴らしい造り。政情としても日米開戦前夜で、各国の権謀術数渦巻く時代はスパイものとしては最高の舞台だった。

ただ何故かイマイチに感じてしまう。
同僚の死の謎を追うというメインプロットは悪くない。が、どうも女傑アンナにフォーカスしすぎだし、主人公含め全員が割と常識的で印象に残る個性を持っていないために霞んでしまう。
ボンドのような荒唐無稽でもエンタメとして優秀なスパイ像なら良かったけど、諜報活動も地味だし、結局成功するわけではないので盛り上がりに欠ける。
ラストのアンナとの脱出劇も2人の関係の浅さからあまり感動出来ないし、それを見逃すタナカの心情も理解しがたかった。

物語の淡白さは寧ろリアルかもしれないが、折角の舞台を活かして、もっと重厚で情緒に富んだ話が欲しかった。