ナトリ

あゝ、荒野 後篇のナトリのネタバレレビュー・内容・結末

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

観ているときは精一杯。
あとからいろいろ考えてしまう作品。

自殺フェスや何やら「このエピソード必要?」と思っていた部分が全部絡み合ってくる。「介護はなんか汚ならしい」と言った少年は、シンジと対決してほしかったな。あの少年がちょっとうまく描ききれていなかった気がする。

ヨシコとバリカンが去ってしまう気持ちは痛いほどよくわかった。でもシンジの孤独もわかるから、やっぱりすごく痛い。シンジは結局リュウキのことやユウジとの因縁を誰にも話してないし、両親のことを自ら話したのもバリカンに対してだけなのかな? ユウジだけが知っている過去、シンジ母だけが知っている事実…。多面体の人間。

ラストバトル。最初、ヨシコもシンジ母もいなくて、女不在の世界という感じ。二人が登場したときは「いっそ女不要の世界」と割り切ってしまったほうが潔いのではないかと思った。
ただその後にヨシコ母子のすれ違いや、シンジ母の「殺せーっ」という叫びがあって、ああこれを描きたいためだったんだなと納得した。
母が殺せと言っても、シンジはバリカンを殺すまい。ヨシコが最後にバリカンを呼び続けたのが象徴的。みんながバリカンに駆け寄って、背を向けられたシンジのほうが死んでしまうのでないかと心が凍えた。でもそんなシンジに、やっぱりバリカンが応えてくれるんだよなあ…。

ユウジとリュウキのエピソード。
試合後もユウジには関わってきて欲しかったな。結局ボクシングでも勝てないという烙印になってしまったのかも知れないけど、その後のシンジが孤独すぎてツラかった。反則はイカンがな。
敗者の立場で関わっていく覚悟がなかったら「認めてもらいたい」とか、そんな思いで挑戦したり裏切ったりしちゃダメなんだと思う。ユウジはその覚悟がないまま裏切って、リュウキをすがらせることには成功したけど、シンジを屈伏させることには失敗したんじゃないかな。物語としては当然の結末だよな。その点が、バリカンとの対比に使われたのかも。

対比といえば、タオルを投げ込み試合を止めようとした二代目と、ゴングを抱えて試合続行させようとした社長。このシーンは笑ってよかったんだよね?
経営の観点では社長は敗けたんだろうけど、どちらがより主人公二人に寄り添っていたかといえば、当然、社長に軍配だろう。

まあ「え?」みたいなところもあったけど、帰宅後しっかりボクシング中継見ちゃったし、いろいろ考えちゃったし、影響力という点で成功作品なのは間違いない。
ラストの切り方はちょっとあざとすぎたというか、そこで噛ませてくるほどかよと思って苦笑しちゃったけど。でも考えてみると、この人がいなければ、このシンジもこのバリカンもいなかったんだよな。

もう一度前篇から観たくなる。
あー勝ちてえー。
ナトリ

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