前編・後編
寺山修司の小説を現代風に大胆にアレンジした作品。原作未読です。
新宿新次役の菅田将暉のイライラが画面越しに伝わってくるような、そんな熱量を感じる作品。
そしてバリカン健二は『息もできない』のヤン・イクチュン。観終わってキャストを観て、びっくり。予備知識なしに観たのでびっくり。『息もできない』では監督・製作・脚本・編集・主演と1人5役を務めた、怪優。
新次はネンショ上がりの、キレやすく、粗暴で、触るものみな傷つける。ってチェッカーズの唄のような男。でも心根は純真で、人のことをちゃんと想ってあげられる優しさもある。
かたや健二は吃音で対人恐怖症で自衛隊上がりの父親に暴力で支配されている朴訥とした暴力とは正反対のところにいる。
そんな正反対のふたりが新宿でひとりの男と出会い、ボクサーになってのし上がってサクセスストーリー?
かと思えば、そうぢゃない。
生き様。
死に様。
タイムリーな座間の事件とかぶるシーンがあり…
衝撃のラストがふたりを待っているなんて…
明日なんか知らない
今しかない
とりあえず生きている
社会の底辺でもがく
そんな若者
そんな刹那的な生き方しかできない現代の若者の生と性。
そして死。
生きることは、まさに戦うことなんだな、って改めて感じさせてくれた。
自殺防止研究会が示したことはなんだったんだ?少々唐突のように挟まれるこのサイドストーリーは微妙に、いやバツグンに絡まる群像劇となっている。てか、コレを群像劇と言っていいのかとは思うが、わたしは群像劇として受け取った。
奨学金返済に苦しむ者を逆手にとって自衛隊や介護職に導く徴兵制度みたいなモノが出来、どんどん追い込まれる若者たち。
自殺、高齢化社会、介護、奨学金問題など現代社会の縮図。
矛盾弱い者は淘汰され、弱肉強食の世界。金銭的にも肉体的にもタフぢゃなきゃ生きていけない、そんな社会って、イヤだな。
すごくメッセージ性が強く、観ているモノをグイグイ引き込んでいく中毒性みたいなモノがある作品。こんな作品に出会えて良かった。
菅田将暉、ヤン・イクチュンの主演の2人がいいのは勿論だけど、脇を固めるユースケ・サンタマリア、高橋和也、木村多江、でんでん、モロ師岡、山田裕貴、木下あかり、全てが適材適所、ぴたってハマった気持ち良さがあった。全てが納得するできるキャストだった。
菅田将暉って言ったら、今年は『帝一の國』も良かったよね。
そしてバリカン健二役のヤン・イクチュンの『息もできない』も併せて観たいよね。本作同様、抑えることのできない暴力のカタルシスみたいなものを感じる。