宿敵であるユウジとの対決に向け闘志を燃やすシンジ、自分の父親の死にまつわるバリカンとの事実を知ってしまう。一方ケンジは図書館で妊婦の女性と出会うが、彼女と繋がる事はできなかった。二人は兄弟であり同志であり、親友であったが、その壁を超えるためケンジはジムを移籍し、シンジに決闘を申し込む。
新宿の街をしっかり描写しながら、後編は二人の物語にしっかり軸を置き、それぞれの日常もしっかり動く。二人の周りで生死に関わる場面に直面し、父親の死にまつわる事実を知ってしまうが、葛藤しながらもやはりケンジを憎む事などできなかった。前篇で繰り広げられたサイドストーリー、周りの人たちが狭い世界で繋がっていながらも、その物語が後編で転がっていく事はなく、後編はボクシングシーンが主体になっている。ユウジ戦で、とことんまで憎み切ったシンジは、ユウジの心を乱すように挑発し、激しくぶつかり合う。拳のあたる音がずっしりと響き渡り、画面一面からその臨場感が伝わる。
ケンジとシンジの試合はただただ痛みの連続であるが、そこにはしっかりケンジの繋がりたいという思いが伝わってくる。試合=憎む事だとシンジに対し、逆の感情しか持つことができなかったケンジ。ケンジにとってシンジは超えられない壁であり、と同時に一番大事な存在であったと思える。私にはその痛みのすべてが愛であり、彼にとってこれは本望だったと思える。最後の試合ではすべての登場人物が集まる。必死の思いで辿りつくケンジの父親、シンジの母、シンジの元恋人etc。この広い世界、人が暮らす世界の範囲は狭い。そしてしっかり繋がっている。それに気が付けばよいだけなのだ。孤独なようでそこにある愛に気が付いていないだけである。