メランクさん

あゝ、荒野 後篇のメランクさんのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
4.0
日本映画専門チャンネルの完全版で。

まさかこんな現代と直結したデストピアものだとは!
社会奉仕プログラムなんてネーミングからして現政権がこの作品を参考にやろうとするんじゃないかと心配になるレベル。
2021年を舞台にしてるのは明らかに東京オリンピック後を描きたかったからだろうし、東日本大震災の後遺症がありながらも国際協力を進めた結果としての帰還兵のPTSDやテロと思われる爆破事件。
マジでこうなるんじゃね?と思わせる近未来を舞台に、ボクシングを描くということ。
ものすごい熱量だった。

結局、これは暴力映画だよね。
新次にとって暴力が生きる手段なんであり、
和解を選んだリュウジの説得にも応じず、ユウジを倒す。
そして「本当にこれでいいのかよ?」とユウジに凄む。
彼を駆り立てるのは憎しみであり、
最後までそれは持続する。

直接に関わることはなくても、
社会的な怒りの感情が新次とクロスする。
それが爆破であり、デモである。
ここらへんがじんわり効いてくるのは、
長尺の作品でやる意味だと思う。
底辺にいる若者にとっては目の前の敵、目の前の壁が全てである。
でも彼らが底辺でいなければならないのは、
社会的な問題が深く関わっている。
その並行する二つのレイヤーの描き方がうまく、おもしろかった。


この作品の何が好きかって言ったらもう圧倒的に片目!
ユースケサンタマリアがかっこよすぎる!
この人の気取らず、弱みを見せない生き様がなければ新宿新次もバリカン健二も生まれなかった。
結局、私は片目になりたいです。