賽の河原

アナと雪の女王2の賽の河原のレビュー・感想・評価

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
2.5
南大沢のtohoシネマズ、休日だとまた違うんでしょうけど平日だと人が少なくて最高ですね。アウトレットで買い物して荷物が多くても安心の仕様で素晴らしい。学校終わりの小学生キッズに混じって、デカい荷物抱えたオッさん1人でキメてきましたよ。
思えば、前作は就職して1年目の作品でね。やはり小学生キッズが気が触れたみたいに例の曲を歌い続けていたので「これはただことじゃない」と思って木場でレイトショー決めたのがつい最近のことのようですな。驚くほどキャッチーな曲の数々、ディズニープリンセスもののタテの関係から見ても異常にフレッシュな展開。特に「魔法」というものへの再解釈の素晴らしさ、『塔の上のラプンツェル』なんかに連なる現代的なプリンセス像とディズニーによる新たな「愛」の定義付け。そして万人が支持するであろう中盤の「レット・イット・ゴー」のカタルシス。音楽的には勿論、ストーリー的にも孤高の極北で、更に氷の映像表現の素晴らしさ。あれは映画館で観られて本当に良かったっていう、心に刻み込まれるような名シーンでしたねぇ。
続編となる本作は「なんでエルサは魔法が使えるんすかね?」って話なんですけどね。脚本家が代わってて『ドリーム』のアリソン・シュローダーさんということで「期待できるやん」ってテンションで観に行きましたけど、まあ。最高でしたね。
まあわりと散漫な作品なんじゃねえかなと私なんかは思っちゃいましたけど、とにかくちょっと戸惑うくらいに対象年齢を上げてきた感じはしますよね。登場人物の造型とかさ、別に全く根拠はないんだけど、「ディズニーのキャラクター」って感じじゃなくて大人のテイストにガラッと変わってる気がするし、絵作りもグッとダークな暗いトーンで登場人物それぞれが自らの孤独と向き合うような作劇になってる、ちょっとジメッとした感じの雰囲気なんですよね。前作の明るいトーンみたいな感じはなりを潜めて、結構シリアスな雰囲気は漂っているっていう。中和剤としてオラフがあいも変わらず下らないこと言って、小学生キッズの笑いを取りに行くんだけど、これもなんか重みを持ったギャグみたいなさ、微妙にシリアスなトーンなもんだから、小学生キッズには地味に苦しい映画だったんじゃねーのかな。
ネタバレしないで論ずるのもアレな作品なんですけど、今回はアレンデールに対してまぁ言ったらサーミみたいな奴らを登場させてさ、やはり現代的なポリコレ事情みたいなものは最大限織り込みつつやってるのがディズニーらしい作品ですよね。特にアナとエルサのアクションのたくましさとかは凄えっすよ。なんならエルサの魔法の力はまんま「フォース」っていう。これも良し悪しで、ぶっちゃけ私は「最後のジェダイ」的な都合のいい魔法(フォース)のインフレ気味に白けないでもないですけれど、良かったんじゃないですか。
要はサーミ的な奴らの磁場を司る4つの精霊の暴走を止めるって話で、それをエルサが都合よく止めていくわけですよ。上映中「なんだかロジックもなく都合よく進むなぁ」とは思うわけです。この都合の良さが即ちストーリーの展開を予測させてしまうっていう欠点はあるんだよなぁ。
あとはなんだろうね、社会的なメタファーをぶっ込んでいる分「よく考えましたねえ。配慮してますねえ」とは思うものの、終盤の顛末にはいろいろ思うところもあるっていうかさ。特に日本人からすると終盤のあの展開はいろんなことを考えさせられるんじゃないかと思うんですよね。絵面的なあの惨状を「魔法」が救ってくれはしない事態を目の当たりにしたって現実に俺らは向き合わなきゃいけないし、そこまでの含意を読み取らないにせよ、本作で精霊の暴走を招いたものがいかに大切なのか、そして、それがうまく働かない圧倒的な自然の前で我々はどういうものを目にしたのかっていうね。そういう想像力の幼稚さみたいなものはありますわ。
そういった日本人ならではの感覚を差し引いたにせよ、所謂白人文明による、大げさに言えばコロニアリズムの問題みたいなものに対しての考えも正直浅いよね。要は本作を「文明」サイドと「未開」サイドに分けたときの、「文明」サイドの話はディズニーがやるとものすごく欺瞞チックに映るってのはあるわな。
とはいえエルサのライブ映画としてはパワーがあるよね。クリストフの中盤のアレも、洋楽リテラシーがある民には笑いどころとして上質。
本作のメイン曲といってもいい「未知の旅へ」ってやつ?「イントゥ・ジ・アンノウン」ですか。そらキャッチーさは控えめながらもいい曲なんだけど、見せ方がね。なまじ、前作の「レット・イット・ゴー」の構図とかをなぞってる分カタルシスが半減するっていうか、逆説的に「レット・イット・ゴー」の例のシークエンスは素晴らしいなって思いますよ。
中盤までなんだか判然としないロジックで進むんだけど、オチが分かるとたしかに全部説明がつくんですよね。でもそのオチにするとなんだか前作でエルサが抱えてた問題が矮小化しちゃうんじゃねえの?って気もするし、あんまり悪くいう人がまだいない作品なんですけど、氷の映像表現にも見慣れたし、言ってることに革新的な新しさはないしとなんとも言えない作品ですよね。
でも、我々が仕事の相手にしてる世代には特別な作品のシリーズなんでね。それなりに良かったんじゃないかなと思いました。
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