のん

ライオン・キングののんのレビュー・感想・評価

ライオン・キング(2019年製作の映画)
3.9
ハリウッドCG技術のエポックメイキング


映像技術というのはある瞬間にブレイクスルーが起きる。スピルバーグの『ジュラシックパーク』とキャメロンの『アバター』がその好例だろう。


マーベル映画では『アイアンマン』のメガホンを撮りながら、役者としても存在感を発揮しているジョン・ファヴローは、『ジャングルブック』で映像技術を一歩進めることに成功した。主役以外はすべてCGという画期的な映画で、世界的にも大ヒットを記録した。



『ライオンキング』はさらにその先をいく。なんと冒頭のワンカットを除き、背景もキャラクターもすべてフルCGで描かれる。

これをアニメーションと呼ぶか、実写と呼ぶかは確かに議論が別れそうなところ。アニメと呼ぶにはあまりにもリアルに寄りすぎているし、かといってほとんどすべてがコンピュータグラフィックスの映画を実写と定義するのはあまりに乱暴だろう。(冒頭シーンだけ実写なのはアニメーションとの差異を強調するため?)


ストーリーについてはオリジナルから何も足さない、何も引かない。『アラジン』がオリジナル要素に現代的価値観を反映させていたのに対して、本作は物語において、あえて語るべき必然性が見当たらない。100パーセントオリジナルの精神性を受け継いでいる。


むしろ2019年のいま、ハリウッドが『ライオンキング』を公開する大義は飽和状態にあった映像技術の進化を、後世に残すためだったと考えるほうが自然だろう。映画が俳優すら必要としなくなった時代にハリウッドはこれからどのような映画を作っていくのか、その一つのエポックメイキングだと思う。
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