茶一郎

ライオン・キングの茶一郎のレビュー・感想・評価

ライオン・キング(2019年製作の映画)
3.6
 ようこそ狂った映像サバンナに。いやはや狂った凄すぎる映像…
 監督ジョン・ファブローはアニメ版『ライオン・キング』という聖典に対するミュージカル版に続く、「自然ドキュメンタリー版」を作ろうとした、と言っているが、本当にドキュメンタリーにしか見えない、本当にディスカバリー・チャンネルにしか見えない映像に仕上げてどうする。

 そしてこのどう見たって「動物」にしか見えないキャラクターの狂った、何が凄いのかさっぱり分からない凄すぎる映像に、10分もすれば目が慣れてくるのですから、人間という動物が一番、凄いのかもしれません。

 動画でのレビューはこちらです
 https://www.youtube.com/watch?v=8D_PUcVxN30

 間違いなくその狂った試みで映像史に名前を刻んだ、ワンカット以外全てCGな超実写版『ライオン・キング』。もう従来の「実写?」とか「アニメ?」とかそういった枠組みに入れる事を許してくれず。
 例えば、劇中のカメラワーク(と呼んでていいのか?)は全てカメラマンがドリーを引いたセット(セットと言ってもそこには何もない)で動かしたカメラの動作を取り込んだ、人が動かした「実写」のもの。一方で、表情という概念が前提として存在しない動物すぎる動物を、リアルに生き生きと動かしてみせたのはディズニーに脈々と受け継がれる動物「アニメ」の技術だったそう。
 新しい技術と、古い伝統的な技術とが奇跡をコラボを見せ、この狂った映像は出来上がったという訳です。

 ジョン・ファブロー的には安易に実写版『ジャングル・ブック』からのステップ・アップと言えますが、このステップは凄まじく大きい。
 欲を言えば、最近のディズニーによる古典の現代ポリティカル・コネクトネス改変に沿って、サークル・オブ・ライフの一部として深堀されない母親としての女性キャラをもっと描いて欲しかったものですが、そんな無いものねだりもしていられません。これは必見の映像です。
茶一郎

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