TAK44マグナム

ボヘミアン・ラプソディのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
5.0
誰が一番すごいパフォーマーかって?
そんなの決まってるだろ?
あの男しかいない。
彼こそがロック、いや音楽そのものなんだ。


伝説のロックバンド、クィーン。
エイズのために早逝したリードヴォーカルのフレディ・マーキュリーを中心に描く、彼らの伝記映画となります。

個人的にはそこまでクィーンというバンドに思い入れがあるわけでもなく、詳しいわけでもないのですが、劇中で使用されている楽曲は全て何百回も耳にしたことがあるものばかりでしたので、それだけグレートなバンドということなのでしょう。
それは間違いない。

これもまた、いきなり個人的に刺さったのが、物語が始まるのが1970年だという事実。
(恥ずかしながら、生まれた年です・・・)
前身となるバンドからヴォーカルが脱退して困っていたブライアン・メイたちの前に立った男こそ、フレディ・マーキュリー!
もう、この場面からして格好良い!

そこから、運命の女性であるメアリーと出会い、クィーンは結成され、紆余曲折を経てバンドは全米ツアーを敢行できるほどに成長してゆきます。

これまでにもビッグなバンドの伝記映画はいくつか作られてきましたが、クィーンはあまり影がないんですよね。
もちろん解散話やフレディの健康問題などが持ち上がるわけですが、ドラッグなどの陰鬱でダークな要素がほとんど出てこない。
クィーンのメンバーはけっこうインテリの集まりで、身持ちを崩して転落するみたいな、ロックバンドにありがちなパターンには陥らなかったんですね。
少なくとも本作では、フレディが自分を見失ってゆくぐらいしか暗い部分を見せません。
なので、ある意味とても平和的で観やすいロックバンド映画かもしれません。

映画は、常に優しい視線で登場人物に寄り添います。
突き放すべき厳しい場面でさえも、誰かが誰かを支えています。
多くの言葉は語りませんが、フレディを、クィーンを、みんなが愛しているのが分かります。
ロックバンドの映画というより、家族愛の映画という方が強い。
オーディエンスも含めて、誰もがクィーンという母船に暮らす家族のような、そんな描き方でした。

しかし、やはり圧巻はライヴ・エイドの場面でしょう!
ボブ・ゲルドフがアフリカ飢餓問題へのチャリティとして企画した前代未聞の巨大なロックコンサートがライヴ・エイドですが、これにクィーンも出演、白熱のパフォーマンスを全世界に向かって魅せたのです。
あまりにも巨大な音と、そして人々が共感したうねりは本当に圧倒的で、これをみたら「音楽が世界を変えられる」という事が真実なのだと信じられるに違いありません。
この場面は実際の20分のライヴをセットリストそのままに再現しており(一部カットあり)、身震いするほど素晴らしかったです!
音楽は、人が発明したものの中で最も偉大で崇高であり、そして誰にも平等な文化なのだと、クィーンの神がかったパフォーマンスが教えてくれるようでした!
フレディの天にも届きそうな歌声が、世界をひとつにした瞬間だったのではないでしょうか。

全ての人に、是非、この映画を聴いてもらいたいです。
素晴らしい体験でした。


劇場試写会(シネプレックス平塚)にて