TaiRa

ボヘミアン・ラプソディのTaiRaのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
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映画に感動してるというよりクイーンの楽曲に感動している感じだった。

ブライアン・シンガー念願の企画だったのに撮影中にクビになっちゃって監督交代。これがどの程度影響したのか確認のしようがないのだけど、結果としては上手いことまとまってた。上手くまとまってる事が必ずしも良いとは限らないが。クイーンの伝記映画を期待すると二つ引っ掛かる点があって、一つはこれがフレディ・マーキュリーの映画だという事、もう一つは伝記というより「伝説」に重きを置いた映画だという事。事実関係に対する脚色は、映画をよりドラマチックにする為に必要だし、全てをノンフィクションにする必要はない。事実を操作し悲劇を盛り上げる作法の是非は倫理の問題だから観客の受け止め方次第。ではドラマチックに彩色されたこの映画が面白いかと言えば、特にそうとも言えない。もちろんラミ・マレックをはじめ、クイーンのメンバーを演じた役者たちは最善を尽くし素晴らしいパフォーマンスを見せたし、フレディと恋人メアリーの間にあった『グレート・ギャツビー』のような悲恋も切なくて良い。ただフレディのドラマや作り上げた楽曲、実際に起きたエピソードなどがどれも独立した印象で有機的に絡んで来ない。映画の中で紐付けられたとしても、それが脚色によるもと思わせてしまい素直に感動出来ないのもある。なぜフレディがこの曲を書き、この詞を書いたか、というのがもっと描かれるべきだったのでは。次から次へと代表曲を並べてもドラマとしては楽しめない。クライマックスをライヴエイドに集約するのも視覚的な盛り上がりを考慮すれば正しい。ここで完全再現されるパフォーマンスにはもちろん感動するが、それは実際の映像を思い出して感動している節もある。本人の生き様が既に映画的であるロックスターは伝記映画と相性悪いのではといつも思う。ただ劇場でクイーンの曲を聴き、ライブを追体験出来る点は貴重なので観る価値は全然ある。撮影終盤とポスプロ全般を請け負った後任監督デクスター・フレッチャーの次回作がエルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』なのも面白い。というかこの映画を準備していたから招集されたのかな。シンガー組のスタッフである、撮影のニュートン・トーマス・サイジェルや編集のジョン・オットマンは、長が変わってもベストな仕事をしていたと思う。
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