サラリーマン岡崎

ボヘミアン・ラプソディのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.5
泣くを通り越して、吐きそうです。

ストーリー自体はフレディの半生を描くこともあって、ひとつひとつのエピソードは短いが、その速いテンポの中でも重要な部分を語っているのがすごい。

特に人物の描写が上手い。
ロジャーはフレディと対立しがちで、
ブライアンはバンドのまとめ係、
ベースのジョンはバンドへの加入の経緯は描かれないほどだが、それでも彼の行動だとか言動でバンドの中での中和剤的役割をしていることがわかる。

そうやって少しの描写で性格がわかる人物たちが速いテンポの中で時にわかちあい、時に反発しあい、多くの紆余曲折を経て行くため、観客がこのバンドと一緒に生きて来た感覚になる。
また、よくありがちなバンドの分裂は一回で、
それ以外は反発しあってもすぐ仲直りして
曲作っている感じがとても良い。
変に気が重くならず、このバンドがより好きになる。

そして、そのバンドが作り出す音楽のアイデアが楽しい。
楽器以外の生活雑貨の音を使ったり、
オペラ風にしてみたり、
観客もバンドの一員として足踏みさせたり、
それをフレディだけでなく、4人全員でアイデアを出し合っているところがなんとも好き。
『はじまりのうた』や『シングストリート』でも感じたウキウキ感、音楽って素晴らしいなって肌で感じる瞬間をくれる。
「他の人を演奏させてもただの家来になってつまらない。反発があるからお前らと音楽を作ることが楽しいんだ」
フレディのこのセリフが全てを物語る。

だからこそ、この4人が「家族」となって、
バンドを続けて行くことがとても意味があり、
観客たちもその家族の一員として、
フレディの運命を見守りつつ、
ラストのライブエイドに繋がっていく。
4人とともに生きて来た俺たちはそこで歌われる歌の歌詞の重みがかなり理解できる。
だからこそ、泣くし、それを通り越して、
吐きそうになる。
なんて素晴らしいバンドがこの世にいたんだ。

隣にいた友人も反対側にいた見知らぬ客も首を振りながら、泣きながらそれを見ていた。
周囲の観客も家族だ。
映画館だからこそ味わえるその一体感。
次は必ず応援上映で観る。