TaichiShiraishi

ボヘミアン・ラプソディのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

これは凄い、絶対に映画館で見なきゃいけない映画。
ラストのライブエイドの曲は音響ハンパないし別に応援上映じゃなくても一緒に歌ってもバレないんじゃないかな笑
伝説のチャンピオンとか一緒に歌わざるを得ないでしょ。

思い入れが色々あって公開初日に観たのに感想書くのにここまで時間かかってしまった。

とにかくまずクイーンの楽曲の素晴らしさを再認識。
そしてラミマレックを始め、キャストの演技力、再現力、には本当に驚かされる。
顔が似てるわけではないがパフォーマンス、動きのくせ、ラスト付近ではわざと出っ歯をアピールする仕草まで本当にフレディだった。


他の3人も瓜二つかつジムハットンまでそっくり。メアリーは本人よりだいぶ美人だけど、シングストリートで素晴らしい存在感だったルーシーボーイントンがお得意のミュージシャンの恋人演技をしっかりやってくれる。

ライブエイドの美術の再現力も微に入り細を穿つ出来だし、ライブ特有の少しアレンジした歌い方まで完全再現していてそれだけで感動する。

名曲のシーンごとの使い方も考えられており場面の意味合いと呼応している。

様々な歌詞が愛を求めてもがいたフレディの一生を表していて、ここまでドラマチックなバンドも中々ないのでは。

まず
「愛にすべてを/Somebody to love」
予告で印象的に使われていた名曲の数々を抑えてOPはこの曲。

ライブエイドに向かうフレディの背中を捉えながら流れる「誰か、俺に愛すべき誰かを見つけてくれないか」「俺は毎朝鏡を見て死にたくなる」と高らかに歌い上げる美しいメロディ。


この映画はフレディが「自分のコンプレックスとも向き合い」「愛すべき誰か」を探す物語だというのを冒頭で提示しているのが上手い。

そして終盤で同じシーンが繰り返されるが、今度は同じ画角にクイーンの他のメンバーが映っている。

円環構造でフレディがバンドの仲間という「愛すべき誰か」を見つけたことを表すとても映画的な演出。

「Love Of Mylife」
この曲はフレディが終世愛したメアリー・オースティンに捧げた。

劇中での使われ方は非常に皮肉。

「オペラ座の夜」を作る際の合宿でフレディがこの曲を作っているが、
そこで彼は初めてポールにキスをされ、そこからメアリーとの関係が崩壊するきっかけが産まれてしまうし、
メアリーとフレディが決別することになる夜のシーンでもライブ映像を流す形でこの曲が流れているが、この場面では肝心の「君は僕の全てだ」や「僕のもとを去らないで」という部分の歌詞はフレディではなく観客が歌っている。

この演出によって「フレディの思いがメアリーに伝わっていない」「メアリーはただフレディからの愛が欲しかったのにそれが叶わない」ということをあらわすシーンとなっている。

「ウィーウィルロックユー」
この曲が生まれるシーンではスタジオで他のメンバーが奥さんと一緒に足踏みしているのに対し、フレディだけが1人で彼の孤独を表しているし、
そして歌詞の意味は「今町でくすぶっている若者たちよ、お前たちを揺さぶってやる」という内容。
劇中ではフレディがこの歌を熱唱している時は、家庭を作って安寧し始めているメンバーたちに再度火を付けようとしているようにも見える。

フレディがポールを追い出す時のアンダープレッシャーも切なく流れるし、
エンドロールではドントストップミーナウとショーマストゴーオンが流れるのも印象的。

全てが終わってフレディが死んだことが字幕に出てもドントストップミーナウが流れて「俺は今最高に楽しいから止めてくれるな」ってフレディが楽しそうに歌ってると爽やかな印象かつ切なさも増してくる。

そしてショーマストゴーオンは死の淵にいたフレディがそれでもステージに立つんだという意志、フレディがいなくなってもクイーンは終わっていないという残されたメンバーの意志が感じられる名曲。最後まで考え抜かれている。


そしてライブエイドでは実際に歌った曲を再現しているんだけど、ちゃんと伏線を回収するかのようにフレディの人生を総括する形になっている曲の数々に驚かされる。

ボヘミアンラプソディは出自を捨てて音楽の道に向かい、死期が近い彼そのものの歌。ピアノパートだけで終わらせたのも意味があったんだろう。

レディオガガは自分達を有名にしてくれたラジオへの感謝、ハマートゥフォールも死が近づくことを歌っている。

そしてそんな人生を送ってきても、メンバーやメアリーやジム、そしてファンに出会えた俺は、俺たちは勝者なんだと歌い上げる伝説のチャンピオンは本当に感動的。
実際の映像では確認できない生き生きしたフレディを見つめるメンバー達や袖の人間の心底嬉しそうな愛おしそうな顔や、客席にいて涙ぐんでいる同性愛者たち、テレビで見つめる家族たちが見られるのも映画ならでは。
みんなエキストラの一人一人に至るまで本当に素晴らしい演技。アクションに対してのリアクション演技が完璧。
中盤でフレディがノリノリでもメンバーが冷めてそうなシーンがあったのも効いている。

そしてラストはフレディがファンに感謝と別れを告げてから、メンバーたちを振り返る。
彼が長い旅路の果てに見つけた一番大事なもの。
フレディの後ろ姿から始まって、振り返った姿で終わるのも綺麗だった。

ちなみにこの映画史実と違うというツッコミをたくさん受けていますが、史実を変えてまで描きたい話が作り手、もっというとブライアンメイとロジャーテイラーにはあったということでしょう。

ラミマレックの顔がフレディに似てなくても演技力でどんどんフレディに見えてくるように、史実と違ってもやっぱりこれはQUEENの物語としての本質を捉えていると思う。

後はロジャーとブライアンがこうあって欲しかった現実というのがあるのかも。

あえていうならポールにちょっとだけ救いがあればいいのにとは思ったけど。

クイーンファンに捧ぐ映画としても、初心者の入門編としてクイーンの不滅性を高める役割としても文句なし。見てから史実を調べるのも楽しいよ。

劇中ではビジネスライクに見えたジョンディーコンがフレディがいないクイーンに意味はないと97年に実質引退しているのにグッときました笑。

3回目は応援上映行くぞ!
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