Torichock

ボヘミアン・ラプソディのTorichockのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
3.4
「Bohemian Rhapsody/ボヘミアン・ラプソディ」

なんだ、この異様な高得点は。
音楽映画って、やはり批難されるづらい傾向があるのか。

Queenの音楽は、僕の人生の中ではあまり鳴り響いてこなかった。そのせいか、劇中で流れる音楽の数々も、知った曲は半分くらい。
メンバー構成に関しても、知らなかった。
しかし、フロントマンのフレディ・マーキュリーがどういう人生を辿って、どういう形でその生涯を終えたかは、流石に音楽史の常識の範囲内で知っている。

キレッキレの予告から、期待値はかなり上がっていたし、興奮!感動!熱狂!という、カロリー高めな宣伝と、周りの人の絶賛も相まって、どんな作品かと身構えてしまったのが、少しまずかったのかもしれない。

良かった点はいくつもある。
音楽が立ち上がる瞬間はどれも素敵だったし、美術やその時代の再現(これが中心的に褒められてるのは、いささか気になるが)は素晴らしかったし、ブライアン・シンガーのあくまでパーソナル・個人的な問題や苦悩、それに対する回答への、深い愛情と熱量を感じた。
音楽の使い方もエネルギッシュで良い。
それに、ルーシー・ボイントン。
彼女が出てくる時間は、どの時間も優雅な色気と、不安感が常に空気を支配していたし、やっぱりBrotherとしては、彼女が音楽映画に出てくるだけで、グッと引き込まれてしまう感覚はある。
「シング・ストリート」でロンドンまで駆け落ちして、Queenにたどり着いたのか?って、それは時代がもうめちゃくちゃ。
まぁ、あの映画と並べて欲しくないのだけど。
あと、ネコちゃんも可愛かったね。

でも、なんかしっくりこないのはなんで?

きっと僕は、つくづくブライアン・シンガーと感どころが違うんでしょう。

「X-Men」もそうだけど、パーソナルなところに視点が向いてるときは、とてもドラマチックなのに、なにか全体像になると事務処理感を感じてしまう。
一個一個の味はしっかりしてるのに、なんかモソモソして、淡白にすら感じる部分もちらほら。「X-men」もそうだったな、そういえば。
マシュー・ヴォーンが、しっかりと下味をつけてくれた「ファースト・ジェネレーション」以降も、結果的にモソモソにしてたし。
今回はもちろん、Queenの音楽という強烈なスパイスが効いてるから、好きな人は絶対好きで間違い無いとは思うんだけど、僕はそこまでなので、こういう感じ。

多分、場面と場面のつなぎ方が、全然エモーショナルに響いてこなかったんだと思う。
かといって、画でウォッ!!とさせるところは、ほとんど予告で先出ししちゃってる感プンプン。

僕の感性が変なんでしょうね、さーせん。

顔とかソックリなのはすごいことかもしれないけど、そういうのはいいから、そういうことじゃないからって気持ちは、正直ありました。

しかし、エンドロールの「Show musw go on」と過去映像には、しっかりと胸を打ち震わされた。

The show must go on
The show must go on, yeah
Inside my heart is breaking
My makeup may be flaking
But my smile, still, stays on

ショウは続けなくちゃいけない
ショウを途中でやめちゃいけない
こころの内側が壊れかけても
メイクが剥がれ落ちかけても
舞台の上では笑顔を続けるんだ…

アーティストがアーティスト足り得るために、アーティストを気取るような"アーティスト様"がうざったい日本の音楽シーンにムカついてる僕にとって、最後のライブ・エイドのシーンとエンドルールは、エンターテイナーとしての誇りを感じずにはいられなかった。


そして「I was bone to love you」が流れなかったのは吉。月9のせいっていうのもあるかもしれないけど、この人たちの伝説の中で、あの曲はそこまでの価値がないのは、そこまでQueenを知らない僕も、なんとなく感じてたし、この映画からも不必要だなと感じたので。
木村拓哉って罪な奴だね。


今年も残りわずかなので、一本一本大切に観ていきます。
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