垂直落下式サミング

ボヘミアン・ラプソディの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.9
ロックバンド「クイーン」伝説を映画化。
この上なく応援上映に適した音楽パフォーマンス映画という意味で、無駄がなく非常に純度の高い作品だ。
クイーンメンバーは製作に参加しているので、物語のなかでは超いいやつ。でも見た目は美化せず演じる役者は本人に寄せている。フレディは丁度いい感じで灰汁抜きされていて、ブライアン・メイが激似。
この映画の成功は、監督とか制作会社の手柄とかではなくて、ひとえにフレディ・マーキュリーの魅力に寄るものだ。歌唱によるエモーションを最大化するために、最後のライブパーフォーマンスに向けて物語が進んでゆくシンプルさが効果的。そのままブライアン・シンガーが監督していたら、フレディが自身のセクシュアリティについて苦悩する様子や、天才が故に周囲に理解されない孤独など、クライマックスの盛り上がりの邪魔になるものがもっと掘り下げられたかもしれないので、このくらいの味付けで正しい。
タイトルが『クイーン』でも『フレディ・マーキュリー』でもなく『ボヘミアンラプソディ』なのは、今、この時代に合ってる。くよくよしている場合じゃないし、どん底だからって嘆いてる場合じゃない。何もかも停滞し、誰もが誰かに対して孤独なこんな時だからこそ生き残ってやるぜと、気分を上へと押し上げてくれる。