暮色涼風

ボヘミアン・ラプソディの暮色涼風のレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
3.7
この映画では触れられなかったけど、"Teo Torriatte"を中1の頃は特によく聴いてたなあ。今は亡きMDで。なんで"r"が2つなんだろうって思ってたなあ。

曲が良いから上映中は勿論気持ちが高ぶるし、ひとつひとつの詞を聴くだけで色々と想像させられ込み上げてくるものがあったけど、鑑賞後に落ち着いて振り返ってみたら、映画としては平凡だった。

『ジャージー・ボーイズ』にジェンダー論を足したような程度で、この映画の根本はやり尽くされていて、それを超える要素が無いから、クイーンとしての何かを見た気がしない。
YouTubeで偉大なバンドの楽曲をアップして、その動画で広告収入を得ているのとなんら変わりはない。
この映画がこんなに高評価なのは、映画への評価ではなくクイーンへの評価ではないのかな。

自分はクイーンのメンバーを実際に見てきた訳でもないから、知り得ている情報自体が本当かどうかも分からないし、この映画のどこからどこまでが事実かも分からないが、事実と異なる部分があるといってこの映画を否定してしまうのは、「じゅん散歩」や「ぶらり途中下車の旅」という番組をやらせだと言うのと同じほどナンセンスなことで、"嘘は演出"と割り切って観るべきだ。
伝記といえどあくまでフィクションなのだから、それで製作者の語りたい真実を表現できているのなら、それはそれで良いと思う。できているのなら。ダメならいっそ、もっと嘘と理想で濃くしてぶっ飛んで欲しい。
「自分が誰かは、自分が決める」
その根本にあるテーマを、もし架空のバンドでこの映画と同じように描いても、同じように高評価を得ることはできなかっただろう。この映画からクイーンを取ったら何が残るというのか。物足りない脚本だ。
劇中でも語られる「フレディにたかるハエ」って、この映画の製作者も似たようなものだなと思ってしまった。
この映画の良いところである"知らない世代にもウケる作り"にできるなら、ビートルズやツェッペリンで同じようなことしても、アーティストのおかげで儲かりまっせ。

メンバーの再現のクオリティは高いけど、あの前歯は入れ歯だよね。口の中を写さないように気を遣いすぎている寄りのショットが歯がゆかった。歯だけに。
暮色涼風

暮色涼風