まず、ジャンルの枠に囚われず常に革新的な音楽を作り続けたクイーンのアイデアと趣向に惹きつけられる。あの名曲が誕生するきっかけや舞台裏を覗けるだけでも、カタログ的な紹介ではあるが楽しい。
だが、何故クイーンのメンバーがそれぞれ特別な才能を持っているかという描写が薄いため、トントン拍子で成功していくのに説得力がないのも確かで、それぞれのエピソードが散漫な印象を受ける。このあたりはブライアンシンガー監督の途中降板の影響なのかも知れない。
しかし、そんな散漫な印象も、ラミマレックの圧倒的なパフォーマンスが力づくで本作をまとめ上げてしまう。再び「家族」となりチャリティーコンサートで歌われる名曲の数々。その歌詞に込められた想いやエピソードが観客の脳裏に自然と走馬灯のように甦り結晶化するのだ。
そしてそれこそ、クイーンが求めていた自分たちと観客との一体化であり、本作の構成も作り手の想いを観客が共有しているからこそ、最後のパフォーマンスで感涙してしまう。伝記映画としては拙い箇所が多々あるが、参加型の音楽映画としてはこれ以上ない出来なのではないか。
唯一なぜこれだけ名曲が紹介されている中で、本作のタイトルをあえてボヘミアンラプソディーにしたのか。そこに物語的な説得力を感じさせることができればなお良かった。
