こーた

スクランブルのこーたのレビュー・感想・評価

スクランブル(2017年製作の映画)
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子どものころ、車が大好きだった。
家のなかではミニカーをならべて悦に入り、おもてへ出ては道を過ぎる車を眺めて、その車種を悉く言いあてて飽きることがなかった。
好きだったのは、どちらかといえば国産車であったり、あるいは消防車やショベルカーといった、所謂「はたらくくるま」たちであったが、とにかくわたしはそんな子どもだったらしい。
らしい、というのは、そのころの記憶がほとんどないからだ。いまではクラウンとカローラの区別もつかないほどの車音痴で、乗ることもほとんどない。それでも映画にカーチェイスが出てくると嬉しくなるのは、そのころの記憶がまだ微かに残っているせい、かもしれない。
長じても車好きが抜けなければ、実物を欲しくなってしまうのは、必然だ。ミニカーでは飽きたらず、ピカピカに磨かれたクラシックカーやスーパーカーを、飾りたてて悦に入る。音、乗り心地、曲線。
男の子の哀しい性(さが)だ。これではお金がいくらあっても足りない。
だから、盗む。
危なっかしい連中に命を狙われ、窮地につぐ窮地。まわりは敵だらけで、それでも車を見れば欲しくなる。
かつて車好きだったわたしは、その記憶がすっかり抜け落ちていて、ほとほとよかったと安堵する。こんな危険な人生では、お金どころか命がいくつあっても足りない。
かわりに映画で、そのスリリングな遊びを体験する。それくらいが、ちょうどいい。