deenity

ロング,ロングバケーションのdeenityのレビュー・感想・評価

3.0
病で死を間近に迎えた妻がアルツハイマーで記憶が消えかけている旦那と人生最後のプチ旅行を楽しむほのぼのロードムービー。
二人の状態を思うと重たいのだけれど、二人の緩い掛け合いは心地よく、道中起こるドタバタも含めて温かく見守っていられる作品。
だって突然記憶が消えたり違う歳の記憶に繋がったりしちゃうわけだからそれは実際そう温かく見れるものじゃないわけよ。でもそれをOKにしてしまうのは奥さんを演じたヘレン・ミレンのパワフル且つ繊細な演技の賜物。アルツハイマーなんて例えば『アリスのままで』みたいにしんみり来るような展開になりがちなのに、こんなにも温かく鑑賞できたのは主演二人のキャラクターが大きかったと思う。年取ってもいつまでも幸せそうに旅ができる夫婦を羨ましく思えた。

ただまあその反面、そう言っておいた手前申し訳ないけどこの夫婦みたいにはなりたくないという気持ちも。二人のやってることは憧れる。人生の締めくくりを楽しい旅で終わらせようとする発想もナイスだし、旦那は記憶があれだからまだしも奥さんのアルツハイマーを受け入れる優しさは素敵だと思う。
でもちょっと私には図々しく感じた。老人ホームのシーンなんかは顕著だが、周りのことが見えてないというか気配りができてない人ほど痛々しく感じるものはない。ヤキモチを妬いたりキスをしたり、時にケンカをするのもいい。だけどそれを周囲の目というものを意識した上でやって初めて理想の夫婦かなって思えるから、時々ボーダーを踏み越えちゃう時なんかは白い目で見ちゃってる部分もあったかな。

まあそれでも羨ましく思えたのはラストの締め方かな。プチ旅行の締めくくりをどう迎えるか。そして二人の子どもたちの表情。これがあるかないかではこの夫婦、この作品自体の評価はガラッと変わってくるのは間違いない。
二人のラストは想像通りだが、子ども二人の表情にこれだけ魅力があるのなら、もうちょっと流れの中で上手く登場させて欲しかったな。
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