このレビューはネタバレを含みます
アルツハイマーの夫と末期ガンの妻という、難病モノのかけ算みたいな設定なんですが、湿っぽくなりすぎないのはドナルド・サザーランドとヘレン・ミレンの老練な演技によるところが大きいかと思います。
特にD・サザーランド御大が、いかにも博学で聡明な元教授といった振る舞いから、一瞬にして幼稚でわがままな子どものようになってしまうところの演技は流石の一言です。
しかし、非常にうまくバランスをとっているものの、やはり映画全体には涙を誘うような空気が漂っていて、クスッと笑える場面でも何となくしんみりさせてしまうのは勿体ないように感じます。
ただ、ラストのある選択は(そのものの良し悪しは置いといて)、忖度した結果の取ってつけたような結末とは違うもので、いわゆる"ハリウッド映画"では観ることができないものです。ここはイタリアで活躍する脚本家・監督らの考えがハッキリと示されているところで、とても良いなと思いました。
すべての人に訪れる終焉について、観終わった後で誰もが語りたくなるという意味で、あのラストはアリだったのではないでしょうか。