Inagaquilala

リュミエール!のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

リュミエール!(2016年製作の映画)
4.2
これは映画ファンなら必ず観ておきたい作品だ。自分は東京国際映画祭で観賞、この直後に一般劇場での公開もスタートしたが、日本全国でわずか4館。映画史のスタートを垣間見ることのできる作品の公開がこれほど少ないとは、やや落胆している。それほど、この作品に登場する映像を実際に目にした衝撃は大きかった。映画の原点を知るには、格好の作品なのだ。

撮影と映写の機能を持つ「シネマトグラフ」を発明したことで「映画の父」と称されるフランスのルイとオーギュストのリュミエール兄弟。この作品は彼らが1895年から1905年の10年間に製作した1422本の短編作品から108本の作品を厳選して再構成されており、4Kデジタルによる修復を施し、90分の作品となっている。映画史の黎明期を飾る貴重なものばかりが集められている。

リュミエール兄弟は彼らが発明した「シネマトグラフ」を持たせて、世界各国に撮影者を派遣している。ヨーロツパはもちろん、アフリカ、アメリカ、アジア、そして日本にまで足を伸ばして、その当時の貴重な景色や行事をフィルムに収めている。これがなかなかバラエティに富んでいて面白い。アメリカではリュミエール兄弟には遅れはとったものの、映画を開発していたたトーマス・エジソンらの反対で撮影者が強制送還されたというエピソードもあったという。

また、リュミエール兄弟の工場から人が出てくる映像がいくつかのパターンで撮影されていたり、移動撮影やトリック撮影も試みられていたり、さらに簡単な寸劇まで交えたコミカルな映像まで含まれている。これらはいまも続く映像表現の原点で、かなり興味深い。ひと続きのフィルムは約50秒で、汽車や船の進水式などやはり動くものを中心にシネマトグラフは向けられている。

エレノア・コツポラ監督の映画「ボンジュール、アン」にも登場するリヨンのリュミエール研究所。ここのディレクターを務めるティエリー・フレモーが製作、監督、脚本、編集を担当しているが、このリュミエール研究所も映画ファンなら一度は訪れてみたい。無声映画時代の弁士からの発想だろうが、日本語吹替版のナレーションに、落語家の立川志らくの起用しているのにはやや違和感を感じた。映画の歴史を紐解くわけなのだから、もう少しインテリジェンスを感じさせるナレーションでもよかったのではないかと思った。
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