カツマ

テルマのカツマのレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
4.0
抗えない欲望の行き場はどこへ。押さえつけた感情は爆発し、いつしか強烈なフラッシュバックを引き起こす。
最初から何かがおかしいこの映画。だが、蓋を開けてみればホラーではなく、重厚な青春ドラマだったと言っていい。暗示的な映像は、透明なままその美しさを画面上に描き出し、北欧らしい凍れる世界の中へと冷凍保存されていく。

ラース・フォン・トリアーの甥、という枕詞はもう必要ないと思う。北欧の新たな鬼才ヨアヒム・トリアーが名作『母の残像』に続けて送り出す象徴的なアートで固められた青春ドラマ。謎めいていながらも、そのドラマに内包されたメッセージは思いのほかダイレクトだ。

〜あらすじ〜

敬虔なキリスト教の家庭に育ったノルウェーの田舎町出身のテルマは、大学進学のため首都オスロで一人暮らしをすることになった。心配する両親からは毎日のように電話の催促があるが、それを少し煙たく思い始めたある日、彼女の身体に異変が起こる。大学の図書館で勉強している最中に、テルマは発作を起こして倒れてしまうのだが、その時隣りに座っていたという縁で、同級生の女子アンニャと出会った。
次第に仲を深め合う2人。テルマの中でアンニャの存在が大きくなればなるほど、その都度謎の発作に襲われることになり・・。

〜見どころと感想〜

この映画はホラー映画として宣伝されている節があるが、さほど怖くはなく、ホラー映画が苦手な人にもオススメできる作品だ。別格の美しさを誇る主演のエイリ・ハーバーは、2年前の北欧映画祭で話題を呼んだ青春群像劇『キスミー!』でも主演を務めており、今後が楽しみな女優さん。彼女を今のうちにチェックする意味でもこの映画を見ておいて損はないと思います。

前半部でかなりしっかりと伏線が用意されており、それらを後半怒涛の巻き返しで回収していくため、読後感はモヤモヤせずむしろ爽やかでした。北欧の冷たい自然を感じさせる美しく静謐な映像美、そこに一点の美しい鳥が咲き乱れる幻想的な世界。少しでも違和感があるならばそれはきっと伏線になっている。そんなヨアヒム・トリアーのストーリーテリングには叔父を越えるほどの才能を感じさせてくれました。

(劇中でも説明がありますが、強烈なフラッシュが連続する映像があるため、光に敏感な方は注意して見てください)
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