風の旅人

ちはやふる ー結びーの風の旅人のレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.5
「花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに」
(小野小町「百人一首」)

青春映画の金字塔、ここに完結。
「上の句」で多くの映画ファンを虜にし、「下の句」で着地点を見つけられなかったシリーズが、原点回帰して帰ってきた。
これまでの流れを踏まえながら、時折挟まれる過去の名シーンに涙腺が緩んだ。
今作から登場の新キャラクターたちもいい味を出していた。
エンドクレジットにある平田オリザの演劇ワークショップの効果があったのだろうか、役者の演技のレベルが総じて高かった。
特に周防名人役の賀来賢人の演技には驚いた。
私は今作の中で周防名人に最も感情移入することができた。
周防名人と同様に青春と呼べるような思い出がなく、30代半ばで未だに青春を探している私は、彼らの活躍が眩しすぎて目が焼けそうだった。

千年の時を越えて現在に伝わる百年一首から生まれた物語。
日本人が永年培ってきた感性の結晶として、このシリーズは青春という一瞬の煌めきをフィルムに焼き付けることに成功した。
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