ぽんぬふ

ちはやふる ー結びーのぽんぬふのネタバレレビュー・内容・結末

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

対峙する2人の競技者、あるいはチームメイトのあいだで交わされる、コミュニケーションというにはあまりにもパトス的な、震えとでも呼ぶべきものを撮ろうとした試みは大変すばらしいし、ある程度成功していると思う。
そもそもかるた選手は音という空気の震えを捕まえるものだし、名人が感覚していた音になる以前の振動と呼ぶしかない何かを映画に置き換えるならそれは運動の予感のようなもので、つまりこの映画においては和歌が詠まれる直前の呼吸を止めた一瞬の緊張ということになる。
特にやはり、広瀬すずが前歌の下の句の後7字くらいでクッと少し脚を開いて頭を前に出す仕草なんかすごい迫力で、他の役者も3本目というのもあるのか良いけれど、広瀬すずは上の句の時からすごかったからな。
仲間にその震えが伝播していくのをラインの通知のバイブレーションを使って表現したのはなかなか新しいなと思ったし、都予選の最後に負けを悟りながらも畳を叩く素振りの振動が一年生に伝わっていくのとかも、やらなきゃいけないことが多い中で工夫された語りだと思った。その震えは最後の試合の後に太一の体を震わせるところへ帰結するわけで、わかっちゃいるけど結構感動した。
そのほかには主に視線で人間関係を描いているが、その中でも都予選の会場でチームメイトのバラバラになった視線を見せたあとに、周りを見回すと他チームが全員自分たちを見ている、というくだりなど特に良かった。震え、視線の両面で孤高を宿命付けられた名人にも、最後に太一からラインが行くのとかも結構グッときたり。
和歌の意味をしっかり活かせているのも良かったかな、下の句とかはそれが少し不満に思った記憶がある。まあ原作のどこを取るかみたいな話なのかもしれないが。
この調子で書いてるとキリがない。別に不満が無いわけじゃないが、とにかく観たかったやつは観れたので大いに満足したということだった。
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