ぼぶ

トレイン・ミッションのぼぶのレビュー・感想・評価

トレイン・ミッション(2018年製作の映画)
4.1
元刑事の保険屋営業のお父さん(60歳)が、ある日突然クビになる。
家族を食わせるため、毎日10年間も105分の電車通勤を続けてきたのに…。
しかも、家のローンも子供の学費も何とかギリギリで払えるかなってタイミングでの失職は最悪で、これは奥さんにも言えないなと落ち込みながら乗り込んだ帰りの通勤列車。
そこでミステリアスな女から、大金の報酬と人探しを頼まれるがそれが大きな事件への出発地点だった、というようなお話。

僕は電車モノだと、「ミッション:8ミニッツ」が群を抜いて好きなのだけど、それの次くらいには面白かったと思えるくらい、良かった。

初めは何を示唆してるかわからない伏線なのかな?っていう時間軸のズレは、10年分の通勤を表現していたり、携帯がスられる(まずこれがよくできたスタート)ところからの畳み掛け、列車という密室性、顔馴染みの中に混じる新顔、その各キャラクターの個性の立ち方、Barでマーフィーと飲むとこでの伏線や立場の描き方…というような枚挙にいとまがない映画的な面白さ、そして伏線たちがガンガン回収されていく感じはゾクゾクする。
あー、これきっと後に効いてくるよ、わからんけど何かを暗に示してるよ、映画って面白いよな〜と、冒頭からずっと思わせてくれるのである。

展開によって立場が変わったり、誰を信じたら良いのかわからなかったり、そうしたところへの感情移入をすんなりさせてくれるのが、面白さの秘訣なのだろう。

さらにはアクション性もかなり高く、この年齢であのアクションは流石だし、列車内という空間を利用した格闘はかなり見応えもある。

終盤の、セリフで気付くとこも◎だし、俺が私がプリンだってところも良いし、初めは何も知らなかった乗客らのことがわかり、それぞれの終わり方があったのもまた良い。(俺はプリンじゃないよ!も、バス通勤にするわ!も声出して笑った。笑

オチの深みや背景の奥行きを突き詰めると確かに少し浅いかもしれないが、105分という時間に濃縮された面白さの濃度は素晴らしく、大オチも個人的には好きであった。

どんな極限状態でも、自分の信念を正義を貫ける人こそ、真の男なのだろう。
あ、エンドロールが路線図なのも小洒落てて素敵。

短時間しか空いてないけど、しっかりと映画堪能したいって人にはピンズドな一作。
ぼぶ

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