ベルサイユ製麺

坂道のアポロンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2017年製作の映画)
3.4
原作『坂道のアポロン』は知人に借りて大変感銘を受けた作品で、自分でも揃えようと、まず1巻を買いました。ひと月につき1冊ずつ揃えていく計画です。…数年経って今、本棚には色んな漫画の1巻だけがささっており、なんか気持ち悪いので定期的に人に押し付けたりブコフに売りに行ったりしておるのだ。
という事で、原作の細かい内容は忘却の彼方です。ボウキャク・ノ・カナタとか書くとWACK 系のアイドルのメンバーみたいですね。…OK。

ストーリーを凄く圧縮して書くと、
60年代の佐世保。秀才(ピアノも嗜んじゃう)転校生カオルが入学早々校内一の問題児センタロウに何故だか気に入られます。センタロウの幼馴染のリツコのことが気になるカオルは、彼等に巻き込まれるかたちでセンタロウのジャズドラムとのセッションに加わる様になります。凸凹の不思議なバランス。しかし、センタロウが尊敬するジュンイチにいちゃん、更に麗しのユリカさんの登場で彼等の関係は複雑化し、すれ違い始めるように…、って感じです。
原作の絵のタッチがちょっと変わってまして、物凄く線が整理されてて省略されてるんですよね。かと言って、お話まで生活感やリアリティが無いかと言えばそんなことは無くて、ちゃんと胸に迫るし、音楽の素晴らしさも伝わってくる。
原作の、描線やリアリティラインを含めたこの不思議なバランスが実写で再現可能か否かは最注目ポイントだと思うのですが、…取り敢えず“有り”だと感じました。結構意外なことに小細工無し、成功法で突破してきた感じで、コレは好感を抱かざるを得ないし、実際大きな文句も思い浮かばない。(かと言って絶賛するべきところも…)それなりの長さの原作の勘所はしっかり押さえられていますし、普通に上手いと思います。音楽が絡む青春物でよくあるシーンで、急に始まった演奏に皆んなが注目し、演奏終わりで大喝采が巻き起こる、って言う展開。時勢が現代の作品だと違和感有ります(自分なら絶対聴かない!)けど、50年前の高校生が初めてジャズの生演奏聴いたらら、確かに大盛り上がりかもしれない。説得力はなくもない。

演奏シーン、見た目は申し分無し。聴いた感じはもっとラフでも良さそうかな?とは思いましたが、なんせ元が漫画ですからね。別に当て振りにも見えなかったし、良かったと思います。
キャスト、知念侑李さん。初めて見ました。素晴らしい素晴らしさで、ホント素晴らしい。OK?
中川大志さん、かなりのセンタロウぶりでした。もっと見てみたい役者さんですね。小松菜奈については、そろそろ話し合うべきじゃないだろうか?映画中も吾輩と何度も目が合ったし。そろそろそういう時期だと思うんだ。菜奈の為にも…。あとディーンの演技は、なんか中毒性ありますよね。声とか。
てな感じで、トータル的には少女漫画原作物としては大合格だと思います。思いっきりキラキラした青春模様なのに恋愛話に着地せず、更にその先の未来へと繋がるストーリーは(原作由来とはいえ)見事だと思います。…ていうか、コレも三木孝浩監督なんですよねー。だったらこのくらいは出来て当然だな。もっと、なんか『ふしぎ遊戯』とか『レイアース』とか三木監督が音をあげるような作品をぶち当てて欲しい!
あと、最初に出る小学館のシンボルマークムービー、地味に世界一ダサい気がしました。ローマ字がシュシュシューンって飛ぶんだぜ!