回想シーンでご飯3杯いける

坂道のアポロンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2017年製作の映画)
3.5
三木孝浩監督が描く青春はいつも真っすぐだ。失敗談を笑いのネタとして挿入するような事もしない。彼が描く青春の中では失敗はとても痛い事で、その後の人生を大きく左右する出来事(でも最後は救われる)。だから僕はいつも彼の作品に心を大きく動かされる。

そして、「くちびるに歌を」「青空エール」に続いて、本作も音楽に熱中する高校生が描かれていて、演奏シーンと録音に一切の手抜きが無いのが素晴らしい。しかも今回はジャズを扱っていて、知念侑李が弾くピアノも、中川大志が叩くドラムも、かなり難易度が高いはずなのだが、演奏シーンは彼らが実際に演奏しているのだとか。本当に凄い。

真っすぐな作風ゆえに、今時流行りの青春ドラマに比べると演出や台詞が少々が臭かったりするのだが、それもひとつの味になっている。冒頭は主人公が大人になってからのシーンから始まり、そこから回想シーンとして本編に入る構成から分かるとおり、本作は現役の高校生ではなく、どちらかというと、かつて高校生だった大人達に向けて作られたものなのだろうし、回想シーンでのノスタルジックな映像等を見ても、「あの頃、君を追いかけた」や「若葉のころ」辺りの台湾映画に近いテイストを感じる。

それにしてもジャズに熱中した若者の物語なのに、あのエンディング曲は無いだろう。マイナス0.5ポイント。