TatsuoMiyamoto

坂道のアポロンのTatsuoMiyamotoのレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2017年製作の映画)
3.7
ジャズを通して繋がる熱い青春映画。

都会から親戚の家に引っ越ししてきた薫(知念侑李)は学級委員の律子(小松菜奈)にほのかな恋心を抱きます。真面目でお坊ちゃんだとクラスでは思われていた薫ですが引っ越してきた理由が複雑。そんな悩める薫がピアノ奏者(クラッシック)であることを知った律子は喧嘩に明け暮れていた問題児の千太郎(中川大志)と薫を結びつけてくれる。千太郎は律子の幼馴染でジャズ大好きのドラマー。

律子が繋げた2人は境遇違えどもジャズセッション通して青春の輝き、エネルギーを爆発させていきます。クライマックスの文化祭は見応えありました。ジャズセッションを吹き替えなしの5分間。若い2人の努力が伝わってきます。しかし、小松菜奈は色んな顔を持ってますので今後も楽しみな女優さんです。

ちなみにこの映画1966年の佐世保が舞台です。この次年はあの原子力空母エンタープライズの寄港が決定した時期。米軍佐世保基地へ原子力空母が入港する事を阻止する学生運動が激しく一部暴動も起こります。暴動となった背景は佐世保入港をベトナム戦争の出撃基地にされるという反戦運動、そしてエンタープライズが原子力空母なので反核運動。この事件は反米運動ともみなされました。敗戦国日本の若者が燃えていた時期です。
そんな高まる緊張感が米兵がたむろする佐世保の繁華街やバーにあったりしたのが演出上大事な作り込みだったように思います。映画のワンシーンですがとあるバーで米兵が千太郎や薫を蔑むシーンがあるのですがその声を黙らすディーンフジオカのトランペットと歌がカッコ良かったです。ジャズセッション好きな私からしたら堪らないシーン。反戦、反核に揺れるながらも米国の音楽に青春を謳歌する微妙な背景。この時代ならでは!


この映画で使用されてジャズナンバーはiTunesでプレイリストを作成してくれている方がいますのでそちらでも楽しめます。
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