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ボンジュール、アンのchiakihayashiのレビュー・感想・評価

ボンジュール、アン(2016年製作の映画)
4.5
@試写

監督はフランシス・フォード・コッポラ監督の妻にして、先頃カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したソフィア・コッポラの母。『地獄の黙示録』
(79年)の制作現場のドキュメンタリーの共同監督を務め、エミー賞などを受賞。以後も夫や娘が監督する映画の現場を撮り続けてきたが、80歳にして初めて長編劇映画の監督としてデビュー。

とても洒落た作品。ゴージャスで文化度も高いロードムービーで、旅する女と男の関係も、清潔感がおのずとにじみ出ているように爽やかなもの。こんなふうに描けることこそ、成熟というものでしょう。

カンヌ国際映画祭の後、アンは有名な映画プロデューサーの夫と別行動をすることになり、夫の仕事仲間のジャックと車でパリへ向かう。7時間の道のりのはずが、「パリは待ってくれるさ」というジャックのガイドで、名所旧跡から最高のレストランつきの豪華なホテルに一泊、映画を発明したリュミエール兄弟を記念する研究所に織物美術館を訪れたりと、結局は2日間の愉しい旅に。

アンは50歳余。娘は独り立ちし、友人と共同経営をしてきたブティックもその友人がイギリスへ移ったので閉めたばかり。さて、これからの人生をどうしようか、というところ。目にとまったものをなんでもデジカメで撮っているのだけれど、その写真のセンスが光っているあたり、監督自身を彷彿とさせる。

ヒロインには「どこにでもいる女性を演じられる人を探していて、ぴったりだと感じた」と監督がいうダイアン・レイン。離婚の傷心を抱いてイタリアに旅をし、新しい人生を始めるヒロインを演じた『トスカーナの休日』(オードリー・ウェルズ監督、2003)の時よりも、一層、魅力は深みを増している(『トランボ』でも素敵だったけれど)。

お相手のジャック役はアルノー・ヴィアールという俳優、脚本家、監督。わりとフツーの顔立ちで、とくにプレイボーイ感も色っぽさもないなぁと思っていたのだけれど、いやいやどうして、エスプリに富み、礼節もわきまえたフランス男を自然体で見せている。

さて、夫(いろんな女優さんの夫役をやっているアレックス・ボールドウィン)が結構やきもきする二人の関係は、ロマンスに発展するのかしないのか? というありがちの設定については、ほぉ! こう来るか、という(とりあえずの)結末。

いえ、すべてはこれからのアン次第。何事もね。
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